栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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高チロシン食投与時におけるL-チロシン-U-14Cの代謝
山本 由喜子豊島 良吾村松 敬一郎
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1979 年 32 巻 1 号 p. 21-28

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抄録
5%L-チロシンを含む10%カゼイン食 (10C5T) にカゼインまたはメチオニンとスレオニンを添加するとチロシン過剰障害は克服されるが, これらの効果を明らかにするため, 14C-チロシンを用いてその酸化能を測定した。
本実験では, 10C5T食にカゼインまたはメチオニンとスレオニンを添加した飼料 (30C5Tおよび10C5TMet Thr) を幼ラットにad libに与え, 1または2週間後12時間絶食させ最終飼料を一定量 (3.0g) 摂取させた直後L-チロシン-U-14Cを腹腔内注射し, 呼気14CO2の排出を10時間にわたって測定した。その結果呼気への14CO2排出はいずれの群も早く, 14C-チロシン投与後1~2時間で最大になり以後急速に低下した。またチロシン添加群 (10C5T, 10C5T Met Thr, 30C5T) は全群とも呼気14CO2の排出率が高く, 一方チロシン無添加群 (10C, 10C Met Thr, 30C) は体たん白質やTCA可溶分画に多く取り込まれた。チロシン添加群間で比較すると, 10C5T群にくらべてカゼイン (30C5T) またはメチオニンとスレオニン (10C5T Met Thr) の添加により呼気への14CO2の排出率は増大せずむしろやや低下した。これは, 高チロシン食を一定量摂取直後一時的にチロシン酸化能が増し, チロシン添加群はいずれも呼気CO2への排出率が高くなったためと考えられる。
一方, 10C5T Met Thr群は体たん白質への14C-チロシンの取り込みの促進がみられ, 尿中への放射能の排出は各群とも大差なく投与量の2~4%にすぎなかった。また全体の回収率は98~104%であった。
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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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