抄録
本実験の目的は, マウスの成長ならびに肝臓アルギナーゼ活性に対する甲状腺ホルモンの作用と成長段階および摂取たん白質レベルとの関係を明らかにすることである。
最初に, 成長段階との関係を明らかにする目的で, 23, 33および60日齢の雄マウスにL-サイロキシンナトリウム (10μg/100g B. W. 腹腔内注射) あるいは2-チオウラシル (飼料に0.05%混合) を投与することにより, それぞれhyperthyroidismおよびhypothyroidismの状態にし, 7日間, ad-lib feedingによって飼育して, 増体と肝臓アルギナーゼに対する影響を調べた。
その結果, サイロキシンによって, 増体は23日齢では促進され, 60日齢では抑制された。また, 33日齢ではチオウラシルによって増体が抑制された。
肝臓アルギナーゼ活性は, 成長段階にかかわりなく, サイロキシンによって減少し, チオウラシルによって増加した。
次に, 摂取たん白質レベルとの関係を明らかにする目的で, たん白質含量の異なる飼料 (5~35%) を給与した25日齢の雄マウスに, 先の実験に準じて, それぞれサイロキシンを投与し, 増体と肝臓アルギナーゼに対する影響を調べた。
その結果, たん白質の摂取が十分な条件では, サイロキシンによって増体が促進されたが, たん白質の摂取が不足の条件では, サイロキシンによって増体は抑制された。肝臓アルギナーゼ活性は, たん白質の摂取が十分な条件では, 先の実験と同様に, サイロキシンによって減少したが, たん白質の摂取が不足の条件では, 逆に, サイロキシンによって増加した。