抄録
クロロゲン酸の緑変機構を明らかにする研究の一環として, まず, 室温で, 数種のアルカリ性水溶液におけるクロロゲン酸の経時的な変化, およびクロロゲン酸と含窒素化合物との反応で起こる緑変について, 紫外・可視領域の分光測定的検討を行なった。
pH 9付近のMenzel緩衝液, 炭酸ナトリウムアルカリ性水溶液におけるクロロゲン酸の吸収の最も強いλmaxは, 水溶液中での場合より, 42nm長波長領域ヘシフトすることが観察された。またクロロゲン酸の吸収スペクトルの経時的変動について, pH 9付近のMenzel緩衝液, 炭酸ナトリウム, 炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ性水溶液中での検討から, クロロゲン酸は366nmにλmaxを示す黄色を呈する物質 (366物質) に変化し, このものを経て自動酸化されることが明らかになった。
そして, 366物質があらわれているときにアラニン, フェニルアラニン, グルタミン酸およびメチルアミンなどを添加した場合だけ, 新たに可視領域に特徴的なλmax 675~695nmを示す緑色液が得られた。また, 上記緑色液のλmax 675~695nmの吸光度は, いずれの含窒素化合物を用いたときも, λmax 366nmの吸光度の減少に対応して増加していくことが認められた。
したがって, pH 9付近のアルカリ性水溶液中で生じる366物質が, アラニン, フェニルアラニン, メチルアミンなどのアミノ基をもつものと反応し, 緑変することが明らかになった。