栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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大根中の辛味成分の比色定量法
江崎 秀男小野崎 博通
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1980 年 33 巻 3 号 p. 161-167

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抄録
1) 青首宮重大根 (2.5kg) から, その辛味成分であるトランス-4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアナートをチオウレア誘導体として結晶100mgを単離, 同定した。
2) チオウレア化合物の呈色試薬であるグロート試薬組成中の各種試薬の濃度を検討し, 原液を水で25倍希釈して改良グロート試薬とした。
3) 比色定量のための標準物質として市販アリルイソチオシアナートより調製したアリルチオウレアおよび前記トランス-4-メチルチオ-3-ブテニルチオウレアを用いて改良グロート試薬による呈色の条件を検討し, 37℃で45分間インキュベートした後, 600nmにおける吸光度を測定した。これによってトランス-4-メチルチオ-3-ブテニルチオウレアの場合, 20μg/mlから200μg/ml範囲にわたって濃度と吸光度との間に直線関係が認められた。
4) ここに新しく提案された大根辛味成分イソチオシアナートの定量法は次のとおりである。大根磨砕搾汁液5mlを30℃で30分間放置した後, これにエタノール: アンモニア水混液20mlを加え, 60分後, 50%酢酸1mlを加え, 濾過を行なう。濾液1mlに改良グロート試薬4mlを加え, 37℃で45分間インキュベートした後, 600nmにおける吸光度を測定し, あらかじめ作成した標準曲線よりトランス-4-メチルチオ-3-ブテニルチオウレア量を求め, これからトランス-4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアナート量に換算する。
5) 前記定量法により大根の品種, 部位および生長時期と辛味成分量との関係をしらべた. 品種別においては, 同じ秋大根でも品種によって辛味成分量に差がみられた。部位別においては, 根部の先端に近くなるほど辛味成分量の増加が認められた. 生長時期との関係については, 大根中の辛味成分含量は生長とともに減少し, 収穫時期の大根100gより得られた磨砕搾汁液中には12mgのイソチオシアナート量が測定された。
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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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