栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
鉄およびたん白欠乏が成長期ラットの血色素量および臓器中鉄含量におよぼす影響
梶本 雅俊長谷川 葉子鈴木 妙子近藤 雅雄木村 秀子丹羽 源男浦田 郡平
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 34 巻 1 号 p. 43-49

詳細
抄録
鉄およびたん白欠乏の単独と同時の成長期ラット血色素合成におよぼす影響をみた。生後3週齢の雌ドンリューラット (55匹) を20%および5%カゼイン食群の二つに分け, これをさらに対照群と鉄欠乏群に分けて3週間飼育した。毎週1回体重測定のほか尾静脈より0.1ml程度採血を行ないヘモグロビン量, ヘマトクリット値, 網赤血球数, 血漿たん白を測定した。3週後一部を腋下採血屠殺して, 血漿および肝臓の鉄含量を測定した。残りの群を1週間鉄またはたん白食投与による回復の影響をみ, 以下のような結果を得た。
1) 鉄欠乏食による体重の増減は鉄入りの対照に比べ変化がなかった。
2) 血中ヘモグロビン量 (Hb), ヘマトクリット値 (Ht) は20%カゼイン食では鉄欠乏群にHb, Htの有意の低下がみられたが, 5%カゼイン食では鉄欠乏群でもHb, Htの低下はみられなかった。平均赤血球色素濃度 (MCHC) はいずれの群にも大きな差はみられなかった。
3) 血漿および肝の鉄含量について20%カゼイン食の鉄欠乏と回復群が低く, 5%カゼイン食群は血漿鉄が高い傾向にあった。
4) 網赤血球数は加齢にともない低下し, 20%カゼイン食の鉄欠乏群で上昇を示し, 鉄投与によりさらに上昇した。5%カゼイン食では網赤血球数は低下し, 鉄欠乏や鉄投与の影響はみられずたん白投与によって上昇した。
5) 成長期におけるたん白欠乏では貧血はおこりにくく, 良好な成長を示す栄養状態で鉄欠乏性貧血がおこることがわかった。これは成長による鉄要求性の増加と考えられ, たん白投与による網赤血球の増加とともに複雑な造血機構が討議された。
著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top