神経治療学
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症例報告
長期経過を観察できた抗voltage–gated calcium channel抗体陽性傍腫瘍性小脳変性症の1例
温井 孝昌林 智宏山本 真守小西 宏史道具 伸浩中辻 裕司
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2021 年 38 巻 1 号 p. 57-60

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抄録

症例は71歳男性.浮動性めまい,歩行時のふらつきが1か月の経過で出現,増悪した.小脳性運動失調がありSARA score 21点であった.頭部MRIで軽度の小脳萎縮があり,胸部CTで左肺下葉S6に腫瘤性病変を認めた.FDG–PET,経気管支鏡針生検の結果,混合型小細胞肺癌(combined small cell carcinoma,cT1aN2M1b, Stage IV)と診断された.抗voltage–gated calcium channel抗体が陽性であり傍腫瘍性小脳変性症と診断した.化学療法で腫瘍は完全寛解となり,発症から約7年間の長期生存が得られたが,小脳性運動失調については大量免疫グロブリン静注療法,ステロイドパルス療法,血漿交換療法に反応せず,発症5年後のSARA score 20.5点と改善しなかった.亜急性の小脳失調症で頭部MRIに異常を認めない場合,本症を鑑別に挙げ,悪性腫瘍の検索と早期治療を開始する必要がある.

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© 2021 日本神経治療学会
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