血漿交換療法が奏効した治療抵抗性の抗筋特異的チロシンキナーゼ抗体陽性全身型重症筋無力症の1例

抄録

患者は50歳男性で，抗筋特異的チロシンキナーゼ（muscle–specific tyrosine kinase：MuSK）抗体陽性の治療抵抗性の全身型重症筋無力症（myasthenia gravis：MG）であった．中等度の筋無力症状は繰り返す免疫グロブリン静注とステロイドパルスの併用療法やcyclophosphamide静注療法に抵抗性であった．胸部造影CTにて前縦隔に索状と濃淡が不均一な造影陽性組織を認め，限局性の胸腺過形成を疑い拡大胸腺摘除術を施行した．摘出組織は脂肪組織と退縮胸腺で過形成胸腺は見られず，術後筋無力症状は悪化した．術後の免疫グロブリン静注とステロイドパルス併用療法は効果がなく，経口ステロイド薬と免疫抑制薬に加え血漿交換療法の繰り返しで抗MuSK抗体価が減少して筋無力症状が改善した．術前に明確な胸腺画像異常がない限り抗MuSK抗体陽性のMGでは拡大胸腺摘除術の適応はなく，本症例は治療抵抗性の抗MuSK抗体陽性のMG症例の治療法として，血漿交換療法の有用性を支持する症例であった．