神経治療学
Online ISSN : 2189-7824
Print ISSN : 0916-8443
ISSN-L : 2189-7824
症例報告
Tigroid patternを有する白質病変を呈した成人型異染性白質ジストロフィーの1例
松山 裕文平田 佳寛新堂 晃大冨本 秀和
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 40 巻 2 号 p. 122-127

詳細
抄録

症例は34歳女性.32歳頃から金銭管理が困難になり,33歳頃から駐車場に停めた車の場所を忘れるようになった.34歳頃から歩行時の浮動感が出現し持続し,歩行中にふらつき転倒したため前医を受診した.脳MRIで大脳深部白質の対称性の広範な異常信号域を認めたため,当科に紹介受診した.神経学的所見では下肢の深部腱反射は亢進していたが病的反射を認めなかった.神経心理検査ではMini Mental State Examination(MMSE)29点,Frontal Assessment Battery(FAB)14点であった.脳MRI T2強調像では,広範な左右対称性の白質病変を認め,白質病変内に線状の淡い低信号領域を認めtigroid patternが示唆された.神経伝導検査では末梢神経障害を認め,成人発症の白質ジストロフィーが疑われた.白血球中アリルスルファターゼA活性の低下を認め,ARSA遺伝子解析では,p.G101Dのヘテロ接合性変異とp.T411Iのホモ接合性変異を認めた.これらの結果により,異染性白質ジストロフィー(metachromatic leukodystrophy:MLD)と診断した.本例はMRIにおけるtigroid patternよりMLDを疑い診断に至った.Tigroid patternは,白質病変を呈する疾患の鑑別に有用と考える.

著者関連情報
© 2023 日本神経治療学会
前の記事 次の記事
feedback
Top