2007 年 19 巻 5 号 p. 570-578
画像や音声のように突発的変化を有する信号にランダム雑音が重畳した場合,原信号波形をできるだけ忠実に復元する手法として,拡張成分分離型非線形ディジタルフィルタを提案する.このフィルタは,同目的で著者らが先に提案した ε-フィルタ及び,成分分離型非線形ディジタルフィルタの拡張型に相当し,先のものより効果的な信号復元をおこなうことができる.特に,先のフィルタが階段状変化信号と連続的変化信号のどちらか一方にのみ有効であったのに対し,拡張成分分離型フィルタは両タイプの信号に対して同程度に良好な特性を実現するものである.本稿ではさらに,この拡張成分分離型フィルタがニューラルネット構造を有することに着目し,この最適設計をバックプロパゲーションアルゴリズムに基づく手法で行う方式を提案する.計算機シミュレーションでは,階段状変化信号及び連続的変化信号の両者に対して本方式の出力誤差二乗平均が総合的に小さく,その効果が定量的に示された.さらに本フィルタを顔画像美観化処理へ適用し,その有効性を示した.