抄録
近年P2P技術を用いることで,スケーラビリティ,ロバストネスを考慮したシステム構築が可能となり,様々なシステムで応用されている.我々はP2Pネットワーク上のピア間でストレージを提供および共有し合うことで巨大なストレージ空間を構築する分散協調ストレージシステムを提案している.分散協調ストレージは,アプリケーションレベルでハッシュ空間を形成し,自己組織的に構築されたオーバレイネットワーク上で動作する.それぞれのピアはハッシュ空間の特定の範囲を管理し,オブジェクトから取得したハッシュ値を用いて,該当するピアにオブジェクトを蓄積する.一般的に,P2Pネットワークでは,オブジェクトに対する高アベイラビリティを保証するために,複製を配置する.本稿では,オブジェクトの複製がネットワークの規模に適応して配置され,尚かつ,オブジェクトの更新や削除に対する一貫性を保証する分散区間木(Distributed Interval Tree)手法を提案し,シミュレーションによってその有効性を明らかにした.