2014 年 26 巻 2 号 p. 581-592
筆者たちは,視覚障碍学生のための科学学習支援のひとつの取り組みとして,力覚デバイスを用いた科学的な事象,例えば数学的な3次元物体や力学的な現象の触知システムを構築している.本論文では,このシステム構築へ向けての第1段階の試みについて述べる.このシステムでは,科学的事象の仮想現実を触知させるプログラム(触知モデル・アプリケーション・プログラム)が力覚デバイスを制御し,視覚障碍をもつ学生は力覚によってそれらの事象を体験することができる.そのことによって彼らに,科学を理解するために必要な科学的事象のイメージを持たせるようにすることが目的である.筆者らは,システムを開発していく前段階として,いくつかの触知モデルを試作し,それらを視覚障碍の被験者に試行してもらった.本システムの有効性と問題点を明確にしておくためである.本論文では,それらの触知モデルとその実験ついて報告する.さらに,この実験から得られた知見をもとに,今後のシステム開発の方向性について述べる.