知能と情報
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原著論文
偏相関分析による地図の特徴指標とマルチエージェントシステム評価値の分析
伊藤 暢浩岩田 員典纐纈 寛明
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2014 年 26 巻 3 号 p. 658-668

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抄録

エージェントに関する研究分野では,開発されたマルチエージェントシステムを評価する方法を整備することが重要な課題の1つとして挙げられている.特に,異なる環境において動作するエージェントの評価は難しい.そこで本論文では災害救助シミュレーションであるRoboCupRescueシミュレーションを題材とし,環境(地図)の特徴の指標と,マルチエージェントシステム(以降,エージェントと呼ぶ)の評価指標の間にある関係を分析し,明らかにすることを目的とする.この関係を明らかにできれば,エージェントごとの特徴を表現可能な評価指標を定義でき,環境をまたいで動作するようなエージェントの比較が容易になる.つまり本研究の最終目的は,被災したその環境においてエージェント(=災害救助隊)の活動結果を予測し,比較することである.また本論文の環境定量化は,従来のエージェントの移動のみに絞ったものではなく,災害救助のような複雑な問題に対するものであり,その意味するところは大きい.まず環境として対象とする地図の特徴を抽出し,それらを定量化して指標として定義する.地図の特徴としては建物と道路の情報に注目する.これは災害救助シミュレーションにおいて,防災戦略の結果は,道路の接続状況及び建物の密集度に大きく依存すると考えられるためである.このことから,建築面積,建物の要素,建物と建物の位置関係,建物と道路の位置関係,密度の5分類に分けて定義した.またエージェントの評価指標としては,RoboCupRescueシミュレーションのスコアを利用する.これは当該シミュレーションには多数の異種エージェント(消防,救急,道路啓開)が含まれるため,その総合評価として災害救助の結果を表すスコアが適当であるためである.本論文では環境の特徴とエージェントの評価値を分析するため,まず,定義した環境の特徴から重複したものを多重共線性を用いて取り除き,その後,複数のエージェントアルゴリズムを用いて,その間にある偏相関係数を求め,依存関係について検討した.その結果,地図の特徴の指標とRoboCupRescueシミュレーションにおけるエージェントの評価指標との間には依存関係があること,エージェントアルゴリズムによってその依存関係は異なることがわかった.

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© 2014 日本知能情報ファジィ学会
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