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ホップフィールドネットワーク(Hopfield network)
和久屋 寛
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2015 年 27 巻 4 号 p. 128

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抄録

ニューラルネットワーク(神経回路網)とは,ニューロン(神経細胞)と呼ばれる基本構成単位を数式モデルで表し,これらを繋ぎ合わせてネットワークを構築するものである.このとき,階層型ネットワークと相互結合型ネットワークに大別できるが,ホップフィールドネットワークは,あるニューロンが他のすべてのニューロンと対等に結合しており,いわゆるフラットな構成を有するという点で後者に属する.

ところで,特別な構造を有する訳でもなく,提案者である物理学者 John J. Hopfield の名前を冠して,このように呼ばれるには理由がある.一般に,ニューロンは「発火/静止」の2状態があり,その間には「興奮性/抑制性」と呼ばれる2種類の結合がある.これに対して,スピングラス理論(物理学の世界)では,物質を構成する粒子の状態としてスピンを定義し,「上向き/下向き」で表現している.そして,それらの向きを「平行/反平行」に揃えようとする相互作用が働いている.Hopfield は,ニューロンとスピン,ニューロン間結合とスピン間相互作用を対応付けることで,物理学の世界における定義式を利用して,ニューラルネットワークの世界へ「エネルギー」という概念を導入した.周知のとおり,エネルギーは低い方が安定であるため,ホップフィールドネットワークはエネルギーが低下する方向に状態の遷移を繰り返し,安定状態へ収束することが期待できる.

ホップフィールドネットワークの具体的な応用例としては,連想記憶や組み合わせ最適化問題が挙げられる.与えられた条件を満たす解候補が,このエネルギー最小値へ割り当てられるように,ニューロン間結合などを課題に応じて定めるのである.ただし,実際には,偽解に相当するエネルギー極小値が多数存在するため,擬似焼きなまし法(アニーリング)に代表される手法などを併用し,これらを回避するのが一般的である.

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© 2015 日本知能情報ファジィ学会
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