抄録
安全・快適・便利・省エネな空間を提供するスマートビルシステムでは,ビル利用者の行動を抽出し,その行動情報に基づきサービスを実施することが有効である.行動情報抽出の一つのアプローチとして,多数の小型・低消費電力・安価な人検知センサから構成されるセンサネットワークにより,人流や人口分布を計測する研究が行われており,費用やプライバシーの問題を解消する方式として期待される.本研究では,センサノードとして焦電型赤外線センサを用い,小さな衝立やキャビネットにより作られた1人用ゲートを通行する人数と方向を判定する方式を提案する.デュアル型センサを天井に設置し,フレネルレンズにより一組の検知エリアを設定する.床面と人の温度差を変化させ,種々の通行動作を行う予備実験により得られた出力信号データから,信号ピークの符号パターンと振幅比を用いた判定アルゴリズムを考案する.判定対象とする通行動作は,異なる速度で通行(ゆっくり~走る),短時間立ち止まる,複数人が縦列に接近して通行,1人が通過した直後にもう1人が逆の方向に通行である.センサ基板とマイコンボードから構成される通行判定装置にアルゴリズムを実装して種々の通行実験を行い,実際の通行で頻度の高い1人の通過(ゆっくり~小走り)と2人の近接縦列(間隔30cm以上)の通行に対し,100%の精度で判定できることを確認した.講義室やパネル展示会場での検証実験では,1人通過は100%正しく判定され,平均でも通行動作の回数では90%以上,人数計数では88%以上の正解率が得られた.