知能と情報
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28 巻, 6 号
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目次
巻頭言
解説
報告
書籍紹介
用語解説
  • 坂地 泰紀
    原稿種別: 用語解説
    2016 年 28 巻 6 号 p. 200
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    言語処理における「bootstrapping」とは,シードと言われる少数の語やラベル付与されたデータを用いて語の意味同定,語対の関連性推定やシードと類似した語を抽出するための手法である.少数のラベル付与データを用いることから,minimally supervised な手法の一つである.

    語の意味同定や語対の関連性推定としては,Yarowsky[1995]やPantel ら[2006]の研究が有名である.Yarowskyは,言語がもつ特徴(連語や談話は一つだけの意味をもつ)と,ラベルの付与されていないデータを用いて語の意味を同定する手法を提案している.Pantel らは,パタンを用いて二つの名詞対が持つ関連性を同定する手法を提案している.

    シードとして与えた語と類似した語を抽出する手法としては,酒井ら[2006]の研究がある.酒井らは新聞記事中の交通事故事例から交通事故の原因となる表現を自動的に抽出する手法を提案している.この手法では,「が原因」というシードを与え,それとよく係り受け関係を持つ「よそ見運転」などの交通事故原因を示す表現(原因表現)を抽出する.その後,抽出した「よそ見運転」などの原因表現を用いて,新たなシードとなる「のため」などを抽出する.このサイクルを繰り返すことで,数多くのシードと原因表現を抽出できる.

    「bootstrapping」の特性として,サイクルを繰り返すことで適合率が下がり,再現率が向上するということが知られている.多くの場合,初めに与えるシードは信頼性が高いが数は少ない.そのため,適合率は高く再現率は低い状態から始まる.サイクルを繰り返すうちに新たな語を抽出していくが,不適切な語も抽出してしまう.したがって,徐々に再現率は向上するが,適合率は下がっていく.

    少数のラベル付与されたデータさえあれば,いわゆるビッグデータに対しても適用できるため,情報抽出やテキストマイニングに関連するタスクには,「bootstrapping」はとても効果的な手法である.

  • 小林 暁雄
    原稿種別: 用語解説
    2016 年 28 巻 6 号 p. 200
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    誰でも執筆・編集が可能なウェブ上の百科事典であるWikipedia では,記事文書中に記述された用語に対し,その用語の意味を解説する,Wikipedia 中の他の記事を引用するためのリンクを設定することができる.この構造と同様に,Wikipedia 以外のテキストに対して,そこに記載されている用語から適切なWikipedia 記事へ自動的にリンクする手法は,Wikification と呼ばれている.Wikification は,Mihalcea ら[2007]によって,Wikipediaを知識源(Knowledge Base ; KB)として使用することで,テキストからの用語抽出と語義曖昧性解消を同時に行う課題として提案され,またそれを行うシステムも同時に提示された.これは,自然言語処理分野における大きな課題である,固有表現抽出,語義曖昧性解消に対する新たなアプローチであった.このため,自然言語処理のワークショップである,Text Analysis Conference(TAC)におけるKnowledge Base Population(KBP)Track では,固有名詞(Named Entity)に対して,Wikipedia,あるいはDBPedia, YAGO などのWikipedia を基礎としたオントロジーを知識源として対応付けを行う,Entity Linking またはEntity Discovery and Linkingがサブタスクとして設定された.

    これらのタスクの初期の研究では,一語ずつリンクを行う非集合的アプローチによるものが行われていたが,次第に,記事全体中の用語全体が,意味的に関わり合いが強くなる傾向を用い,記事中の用語を一度に推定する,集合的アプローチもとられるようになった.近年では,複数言語間でのWikification またはEntity Linking などの研究もおこなわれている.

会告
特集:「ヒューマンセンシングとその応用」
論文概要
学会から
編集後記
総目次
ヒューマンセンシングとその応用
原著論文
  • 秦 淑彦
    2016 年 28 巻 6 号 p. 887-898
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/01/20
    ジャーナル フリー
    安全・快適・便利・省エネな空間を提供するスマートビルシステムでは,ビル利用者の行動を抽出し,その行動情報に基づきサービスを実施することが有効である.行動情報抽出の一つのアプローチとして,多数の小型・低消費電力・安価な人検知センサから構成されるセンサネットワークにより,人流や人口分布を計測する研究が行われており,費用やプライバシーの問題を解消する方式として期待される.本研究では,センサノードとして焦電型赤外線センサを用い,小さな衝立やキャビネットにより作られた1人用ゲートを通行する人数と方向を判定する方式を提案する.デュアル型センサを天井に設置し,フレネルレンズにより一組の検知エリアを設定する.床面と人の温度差を変化させ,種々の通行動作を行う予備実験により得られた出力信号データから,信号ピークの符号パターンと振幅比を用いた判定アルゴリズムを考案する.判定対象とする通行動作は,異なる速度で通行(ゆっくり~走る),短時間立ち止まる,複数人が縦列に接近して通行,1人が通過した直後にもう1人が逆の方向に通行である.センサ基板とマイコンボードから構成される通行判定装置にアルゴリズムを実装して種々の通行実験を行い,実際の通行で頻度の高い1人の通過(ゆっくり~小走り)と2人の近接縦列(間隔30cm以上)の通行に対し,100%の精度で判定できることを確認した.講義室やパネル展示会場での検証実験では,1人通過は100%正しく判定され,平均でも通行動作の回数では90%以上,人数計数では88%以上の正解率が得られた.
  • 大村 廉
    2016 年 28 巻 6 号 p. 899-910
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/01/20
    ジャーナル フリー
    今日,ウェアラブルセンサを用いた行動認識技術に基づくアプリケーション開発が行われている.しかし,現在一般に用いられる行動認識技術は,事前に学習のための大量のラベル付きデータを必要とする.また,認識結果として得られるラベルは学習データに固定され,アプリケーション利用時に必ずしも適切とならない場合がある.そこで本研究ではアノテーションツールと分析ツールを統合し,能動学習とラベルの階層化を導入してこれらを解決する手法を提案する.能動学習によって効率的かつ継続的なラベルデータ収集を行い,行動ラベルの階層化とその動的な定義変更の許容により認識結果利用の柔軟性を確保する.階層化によるラベルデータ取得の手間の増加はラベル修正を上下階層に伝搬させることで低減する.提案手法のプロトタイプとしてATLAYAを実装し,評価実験によって提案手法によるラベリング作業量の低減や行動ラベル階層化の有用性を確認した.
  • OHMURA Ren
    2016 年 28 巻 6 号 p. 911-919
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/01/20
    ジャーナル フリー
    Predicting pointing gesture can be an effective way for increasing fluency and naturalness in human-robot interaction. This paper, thus, proposes a method to predict a human pointing gesture. The method predicts the final hand position based on one of the mathematical models of human hand motion called the minimum-jerk model. Analytically, the final position of the hand and its pointing gesture finishing time can be predicted by detecting the first peak of hand acceleration, which corresponds to first 21% of the entire movement. We implemented and evaluated the method using Microsoft Kinect and a desktop size robot named Robovie-W. The result showed that the estimation error was about 18cm in CEP(Circular Error Probability), and implied that the feeling of naturalness could be improved, while it improved the impression for motion of a robot.
  • 佐藤 僚太, 波部 斉, 満上 育久, 佐竹 聡, 鷲見 和彦, 八木 康史
    2016 年 28 巻 6 号 p. 920-931
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/01/20
    ジャーナル フリー
    公共空間内を往来する歩行者の属性や行動目的などを推定する技術は,施設の利用状況を自動的に観測し,各人物に最適な情報提供を行う情報環境の構築に貢献できる.その際には,どの人物同士が共に行動しているのかを推定し,歩行者をグループとして扱う技術が求められる.歩行者のグループを検出するには,2人の歩行者間の歩行軌跡や注意の向きの関係を手がかりとする手法が多く用いられる.これらの手法は,観測データ全体から特徴量を抽出して識別しており,歩行者グループは常にグループらしい動きをすること前提としている.しかし,実空間での歩行者グループは各個人の興味の対象の違いや障害物を回避する道筋の違いなどから常にグループらしい行動をする訳ではない.これによって,これまでの手法ではグループ検出が困難となる事例が見られる.本研究では,歩行データの時系列分割とマルチプル・インスタンス・ラーニング(MIL)によって,行動中の短時間に存在するグループらしい振る舞いを検出する手法を提案する.提案手法では,歩行データを時系列分割し,各時間区間の特徴量をMILを用いて別々に識別する.MILは教師あり学習の一種であり,複数の要素データの集合であるバッグ内に,少なくとも1つの正の要素データがあるかどうかを識別する.上記の時系列分割によって,時間区間の一部にグループらしい特徴があればそれを検出することができる.実験では,グループ動作を模擬したデータと,実際のショッピングモールで取得したデータを利用し,提案手法の有効性を確認した.
  • 川本 一彦, 古閑 勇祐, 岡本 一志
    2016 年 28 巻 6 号 p. 932-941
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/01/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,人物軌跡データを用いて人物移動を模擬する確率的セルオートマトンを学習する方法を提案し,動画像上での複数人物追跡に応用する.確率的セルオートマトンの学習では,対象空間全体で十分かつ密に人物軌跡データを収集することは一般に困難であることから,ディリクレ平滑化を用いてベイズ的にデータの欠損や不足を補う方法を導入する.さらに,人物追跡のために,学習した確率的セルオートマトンによる人物移動シミュレーションを画像を用いて逐次的に更新するための逐次データ同化アルゴリズムを示す.実動画像を用いた追跡実験では,提案する確率的セルオートマトンを用いることにより,データに基づかない方法と比較して追跡性能が向上することを示す.
  • MANABE Yusuke, FUKUSHIMA Gen, SUGAWARA Kenji
    2016 年 28 巻 6 号 p. 942-951
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/01/20
    ジャーナル フリー
    It is said that human postural sway in quietly-standing position involves individual differences. From this viewpoint, some contributions have been made for person identification problem. However, current researches on person identification problem based on postural sway data have the following two problems: (1) the most target behavior is the postural sway after completely stepping on a stabilometer, (2) the effect of carrying weight for person identification accuracy is unclear. Therefore in this study we measure postural sway data while stepping on and off a stabilometer as well as standing quietly. In addition, we analyze the effects of shouldering a backpack for person identification accuracy. The results of experiments with 10 human subjects data show that carrying a 2kg backpack affects the identification accuracy, but the postural sway data in shouldering a backpack has a possibility to identify persons. Also, we show some extracted features in stepping on and off intervals have good effect to identify persons.
  • 手塚 太郎, 清野 悠希, 古谷 遼平, 佐藤 哲司
    2016 年 28 巻 6 号 p. 952-962
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/01/20
    ジャーナル フリー
    遠隔地をつなぐe-learningは近年急速に普及しているが,従来の対面型の授業形態と異なり,講師が受講者の状態を把握するのが容易ではない.受講者が講義を聞いているのか,与えられた課題に取り組んでいるのか,あるいは何か別の作業やコンテンツに気を取られているのかなど,受講者の行動を把握することは授業内容や教材の改善に不可欠である.対策としてビデオ通話を使う方法もあるが,多数の受講者が空間的に分散している場合には全体の把握が困難である.この課題を解決するため,本研究では安価に市販されている圧力センサーと赤外線距離センサーを用いて受講者の行動を推定するシステムを開発した.実験の結果,実験参加者が取り組むタスクの種類によって計測値が異なる傾向を示すことが示された.この結果に基づいて定義された特徴量で分類器を学習させ,異なるタスクの間の判別精度を評価した結果,高い推定精度が得られることが示された.
実践研究論文
  • 間所 洋和, 下井 信浩, 佐藤 和人, 徐 粒
    2016 年 28 巻 6 号 p. 963-973
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/01/20
    ジャーナル フリー
    本論文では,ベッドに後付け可能な新しい離床センサを提案する.ピエゾフィルムを用いて試作した本センサは,動作用の電源を必要としない小型で薄型のセンサである.ベッドフレームに取り付けるため,不可視センサとして,プライバシに配慮している.また,モニタリング及び判定のための専用の計測システムを開発した.試作したセンサの出力特性を評価する荷重試験では,荷重と出力との間に線形性を確認するとともに,同じ荷重を加えた場合,試験機の入力速度によって出力値が変化する特性を得た.また,センサの方向依存性として,方向による出力差が最大3倍になるという試験結果が得られた.評価実験では,被験者10名を対象として,本センサの性能を評価した.機械学習法に基づく判定法による交差検定の結果,長座位,短座位,端座位,離床の4パターンに対して,92.1%の判定率が得られた.姿勢別では,短座位が100%,端座位と長座位は98.3%と91.7%の判定率が得られたものの,離床に関しては78.3%の精度に留まった.混同対照表を用いて誤判定を分析したところ,端座位と短座位に分布していることが判明した.
  • 長谷川 大, 小林 裕, 白川 真一, 佐久田 博司, 安彦 智史, 安達 栄治郎, 中山 栄純
    2016 年 28 巻 6 号 p. 974-985
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/01/20
    ジャーナル フリー
    独居高齢者や高齢者夫妻のみで生活する世帯の増加にともない,近親者や友人,知人らによる予防的観点にもとづく長期・継続的な見守りが必要とされている.本論文では,プライバシを保護しながら長期・継続的な見守りを行うことを目標として,モーションキャプチャセンサから得られた被見守り者の関節位置角度情報をアバタの動作として再現して見守り者に提示するアバタ媒介型見守り方式を提案する.KINECTを用いて提案システムを実装を行い,通信性能を検証した結果,700Kbps程度の帯域幅で遅延なく滑らかなアニメーションが実現されることを確認した.また,大学生らを対象にアバタ動作による被見守り者の動作把握率および印象について検証した結果,本システムによって大まかな動作を把握可能であり,また高精度なモーションキャプチャシステムを利用した場合と同程度の好ましい印象が維持されることを確認した.
ショートノート
  • 木佐 省吾, 堀内 匡
    2016 年 28 巻 6 号 p. 986-991
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2017/01/20
    ジャーナル フリー
    加速度センサやジャイロセンサなどを搭載したウェアラブルセンサは,ユーザにとって時間や場所にとらわれずに利用できるという長所がある.本研究では,加速度センサを搭載したウェアラブルセンサを用いて人間の頭部動作を認識するシステムを構築する.利用しやすいシステムとするために眼鏡型のウェアラブルセンサを構成している.「うなづき」や「首を横に振る」などの頭部動作を認識するために,取得した加速度の時系列データから主成分分析によって特徴抽出を行い,k-最近傍法または階層型ニューラルネットワークによる動作識別を行う.さらに,実時間での頭部動作認識を可能とするリアルタイム頭部動作認識システムを構築する.複数の被験者の頭部動作を対象とした認識実験により,提案システムの有効性を明らかにする.
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