顔の認知テストを利用したうつ診断支援システムが提案されている.しかし,テストに用いる顔画像によっては,被験者の好みや既知顔の印象がテスト結果に大きな影響を与える可能性がある.これまでは被験者間で共通する選好要因に着目し,影響を排除する手法が用いられてきた.本研究では,被験者ごとに「快‐不快次元」における選好要因を分析することで,個々の顔印象に対する影響の低減を試みる.また,目・口・鼻に着目した6つの特徴量を利用した定量的分析を行った結果,positive顔では自分の目との類似度,negative顔では自分の目以外との類似度に着目することが重要であると示された.また,自己顔の有効指標を利用して選好度と表情認知の関係性を分析した結果,自己顔と類似した目を持つ顔では,表情認知において快方向へ評価されやすくなることが示唆された.これにより被験者ごとに顔を選定することで,印象評価の個人差を低減できる可能性が見いだされた.