2019 年 31 巻 5 号 p. 842-851
本研究では,人のコミュニケーション開始時の内部状態と接近行動に注目し,提案モデルに基づく接近行動の軌道の分析を行った.実験は人と想定した相手(マネキン)に道を尋ねるシナリオで,参加者は教示により相手の内部状態を想定したうえで話しかけを行った.結果として,参加者の接近行動の軌道は直線ではなく,相手の正面方向を避けるように回り込みながら接近する軌道となることが示された.また,参加者が想定する相手の受容度に応じて話しかけのタイミングを調整していることが示唆された.人が正面方向を避けて相手に接近する行動は提案モデルにより近似的に生成可能であり,同時にその理由についてもモデルの内部状態から説明可能である.そのため,提案モデルの行動生成と内部状態の推定をロボットに実装することが,人–ロボットのコミュニケーション開始場面のインタラクションをデザインするうえで有用であるといえる.