2022 年 34 巻 4 号 p. 710-722
本論文では,感染症の簡便な数理モデルの一つであるSEIRモデルにおいて,実質的な感染率に関係する実効再生産数を最適制御に基づいて時々刻々と制御することにより,総感染者数と経済損失の抑制の両立を目的とした最適化手法を提案する.具体的には,Pontryaginの最大原理に基づいて,感染抑制とそれに伴う経済損失の両方を考慮した目的関数と随伴変数,並びに,Hamilton関数を導入し,正準方程式を解くことにより最適制御を実現する.本シミュレーションの結果,目的関数における経済損失により重きをおいた場合には,感染抑制制御の期間が短縮され,結果として経済損失が減少し,同時に感染抑制効果も低下することが見出された.このことから,経済損失低減と感染抑制効果はお互いトレードオフの関係にあることが見出された.