2024 年 36 巻 1 号 p. 532-537
本研究では,仮想空間のすれ違い時に起こり得る短いインタラクションの際に,ロボットの視線が人間行動に与える影響を調査する.ロボットの視線は人との距離に影響を与える事例が報告されている.ロボットの視線研究では,すれ違い環境下でのロボットとのアイコンタクトによる人間行動への影響はあまり調査されていない.そこで,すれ違い環境におけるロボットの視線の有無によって被験者がロボットに対して取る距離,被験者の視線データの分析を行う.分析結果を用いて,ロボットの視線がすれ違い環境においても人との距離に影響を与えるかの評価を目的とする.実験ではすれ違い時に起こる短いインタラクションを試みるために,すれ違い時にロボットが周囲の人々に視線を向ける外見を考案した.実験結果から,すれ違い環境では人との距離に影響を与えないことが確認できた.しかし,ロボットが視線を向けることで,被験者により注目されることが明らかになった.よって,歩行時にロボットが周囲の人間に視線を向けることで,人間とロボットの短いインタラクションを促すきっかけとなる可能性がある.