2017 年 30 巻 4 号 p. 259-267
インプラント治療後に発生するトラブル(合併症)は,技術的な問題と生物学的な問題の2つがあり,なかでもインプラント周囲炎はインプラント治療後の合併症で最も大きな割合を占めていることが報告されている.インプラント周囲炎の特徴は,周囲組織の発赤・腫脹・出血・排膿・歯槽骨吸収,細菌感染による炎症性病変であり,さらにオーバーロード等の要因も加わり進行するものと考えられる.しかしながら,現状としてはインプラント周囲炎に対する治療法が十分に確立されているわけではない.インプラント周囲炎が発生した場合,炎症性病変であることから細菌感染に対する殺菌もしくは抗菌療法とともにオーバーロードの管理が実施された環境下で,累積的防御療法(CIST)等に従って治療を進めることが重要である.外科的療法の選択には,術前の抗菌療法,角化粘膜の存在,インプラント表面のデブライドメント法,骨欠損形態などの要因を把握した上で実施されなければ,外科治療の効果は確保されない.以上の背景から,インプラント周囲の炎症性疾患の防止には,定期的なSPT(サポーティブセラピー)に基づいた,臨床パラメータのモニタリングならび炎症性疾患の早期発見が最も合理的であると考えられるが,最近の報告では,歯周病重症度とインプラント周囲炎との関連,SPTとインプラント周囲炎の発生率等について注目されている.そこで本稿では,インプラント周囲疾患に対する治療とSPTの考え方について,残存歯を含めた細菌感染に対する殺菌もしくは抗菌療法,オーバーロードの管理,周囲組織等様々な要因を考慮して解説する.