2018 年 31 巻 1 号 p. 64-71
目的:本研究の目的は,臼歯部欠損に対し二ケイ酸リチウム単独冠を用いたインプラント補綴装置の長期予後を分析し,その成功率と臨床的有用性を評価することである.
対象および方法:2008年6月から2014年3月までの間に,単独の歯科診療所にて臼歯部にインプラント治療を受けた患者173人(男55,女118,平均年齢57歳)に既製アバットメントを装着し,セメント固定した383本の二ケイ酸リチウム単独冠が分析の対象となった.5年後のインプラントおよび上部構造の累積残存率および,技術的合併症について後ろ向きに調査を行った.
結果:使用したインプラントはストローマン社製インプラント289本,カムログ社製インプラント94本の合計383本であった.喪失したインプラントはなく,5年経過時のインプラントの累積残存率は100%であった.また,383本の単独冠のうち破折したものは7本で,5年経過時の累積残存率は97.2%であった.3本のクラウンに小さなチッピングが認められたが部分的な削合研磨で対応した.技術的合併症率は2.6%であった.技術的合併症率は小臼歯と大臼歯の間で統計的有意差を認めた.
結論:臼歯部固定性インプラント支持補綴装置として使用した二ケイ酸リチウム単独冠は,5年間の追跡をとおして良好な長期予後と臨床的有用性が示唆された.