2018 年 31 巻 3 号 p. 201-207
マウス骨格筋由来の筋芽細胞株C2C12細胞が筋管細胞へ分化する過程におけるLIPUSの作用に着目し,LIPUS照射による分化誘導後のいくつかのmRNAの発現をリアルタイムPCR法により定量し,LIPUS照射が遺伝子発現パターンにどのような影響を与えるか検討した.まず,分化誘導させたC2C12細胞にはカルシウム沈着がなく,骨への分化を誘導しないことをvon Kossa染色法により確認した.次に,細胞融合に関するシグナル伝達分子のERK5,転写活性因子のKlf2,これらの下流で働くと考えられる細胞接着因子のCdh15,筋特異的な遺伝子の転写活性因子であるMyoDとMyogenin,分化最終段階で発現されるMuscle Creatine Kinase (MCK)を選択し,遺伝子発現量を測定した.
その結果,LIPUS照射によりERK5,Klf2,Cdh15遺伝子の発現量は分化誘導23時間後に増大し,細胞融合が促進されていることが示唆され,分化誘導7日後にはCdh15遺伝子の発現量が再び増大し,照射により多くの細胞が融合して長くなっていた.また,筋特異的な遺伝子の調節因子であるMyoD,Myogeninの発現も促進され,筋管細胞への分化の最終マーカーのMCKは分化段階の早期から発現が増大しており,筋管細胞がより早く完成していた.