日本口腔インプラント学会誌
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原著(基礎研究)
チタンの超親水性処理がラミニン332の吸着特性に及ぼす影響
柴垣 博一野本 秀材野村 智義老川 秀紀吉成 正雄
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2018 年 31 巻 3 号 p. 208-215

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抄録

ラミニン332(LN332)は,上皮細胞と接着,移動を促進する細胞外マトリックスである.本タンパク質のチタン表面への結合は上皮-インプラント界面の生物学的封鎖の亢進に寄与するものと考えられることから,LN332のチタンインプラントへの反応解析や応用は注目を集めつつある.一方,超親水性処理はタンパク質のチタンへの吸着を促進することが報告されている.したがって,本研究はチタンへの超親水性処理がラミニン332の吸着に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.同時に,超親水性処理がラミニン332の吸着を促進する機序を表面分析によって考察した.
水晶発振子マイクロバランス(QCM-D)用のチタンセンサーに,超親水性処理として大気圧プラズマ処理(Ti-Plasma),紫外線照射処理(Ti-UV)を施した.コントロールとして,未処理のAuセンサー(Au-Air)およびTiセンサー(Ti-Air)を用いた.QCM-D法によりラミニン332の吸着特性を評価するとともに,光電子分光分析および走査電顕観察によりラミニン332の吸着状態を検討した.
その結果,ラミニン332の吸着量はAu-AirよりTi-Air上で増加した.また,すべての超親水性処理群(Ti-Plasma,TiUV)は無処理チタン(Ti-Air)よりラミニン332の特異的吸着量が増加した.ラミニン332が吸着した表面を分析した結果,Ti-Plasma,Ti-UV表面では炭素(C)および窒素(N)量が増加し,また,カルボニル基,カルボキシ基およびペプチド結合に関与する官能基の増加が認められ,超親水性処理されたチタンへのラミニン332の特異的吸着にはペプチド結合が関与していることが推察された.
以上の結果より,チタンへの超親水性処理はラミニン332の吸着を増進させることが示唆された.

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