骨粗鬆症や骨転移を有する悪性腫瘍患者に使用される骨吸収抑制薬の副作用として,骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)が知られている.骨吸収抑制薬投与患者における抜歯などの侵襲的な歯科処置にあたって注意を要するが,インプラント治療にあたっても同様である.骨吸収抑制薬を使用している患者は年々増加しており,インプラント治療適応の患者やインプラント埋入後のメインテナンス中に骨吸収抑制薬が開始される患者に遭遇する機会がある.
骨吸収抑制薬投与患者へのインプラント埋入に関して明確な指針はないが,骨強度の評価や将来的なARONJ発症のリスクを含めて考慮すべきである.また,メインテナンス中に骨吸収抑制薬が開始されても十分な口腔管理がなされていれば,インプラントはARONJ発症のリスク因子とはなりにくいものの,インプラント周囲炎がある場合は感染を制御することが必要で,慢性炎症の持続がperi-implant ARONJの発症リスクとなる.口腔インプラント医はARONJの知識を備えるべきで,peri-implant ARONJの発症によって患者のQOLを低下させないよう努めなければならない.今後,インプラント治療が適応の骨吸収抑制薬投与患者は増加が予測され,さらなる臨床データの蓄積の下,骨吸収抑制薬投与とインプラント治療に関するガイドラインが作成されることを期待する.