2019 年 32 巻 1 号 p. 14-19
わが国は,どの国も経験したことのない超高齢社会を迎えた.このような背景で,医学的な問題をかかえた高齢患者に施行されたインプラント症例を目にする機会も多くなってきた.本稿では,口腔外科や口腔内科的にみた超高齢社会のインプラント症例における注意点について述べてみたい.
インプラント周囲組織は,加齢とともに変化し入れ替わる.細胞が代謝し加齢変化していく中で臨床的に最も注意すべき事項は,細胞のがん化である.本邦では2人に1人が一生のうちがんに罹患する.インプラント周囲組織にも悪性腫瘍が発生しうることに注意が必要である.また,口腔とは関連のないがんに罹患した場合も,化学療法や放射線治療によりインプラント周囲組織に影響が出ることがある.
加齢や疾病,治療に伴って身体は全身的,局所的に影響を受け,インプラント周囲組織も変化する.このため,われわれは患者の状況をよく理解したうえで最善の治療を継続的に提供する必要があろう.超高齢社会で求められる“安心なインプラント治療”はこのような観点からも検討する必要がある.