日本口腔インプラント学会誌
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32 巻, 1 号
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特集 インプラント治療 高齢患者に対する外科的対応基準
  • 矢島 安朝, 小倉 晋
    原稿種別: 特集 インプラント治療 高齢患者に対する外科的対応基準
    2019 年 32 巻 1 号 p. 4
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/30
    ジャーナル フリー
  • 木津 康博
    原稿種別: 特集 インプラント治療 高齢患者に対する外科的対応基準
    2019 年 32 巻 1 号 p. 5-13
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/30
    ジャーナル フリー

    歯科インプラントが臨床応用されてから54 年が経過し,欠損歯の補綴治療として良好な予後が獲得される治療法として周知されてきた.一方,世界の中で最高水準である日本国民の高齢化にとって,口腔機能の維持は,健康へ与える影響も考慮されて重要事項となってきている.そのため,高齢患者が欠損歯補綴治療として歯科インプラント治療を希望することが多くなってきた.高齢者は高齢期以前と比較すると生体機能の老化が進み,特に口腔機能の老化は歯科治療においてさまざまに問題となることが多い.歯科医師は高齢者の歯科インプラント治療を行う上で,必要不可欠な外科的・補綴的対応を行っていくべきである.

    また,高齢期以前に歯科インプラント治療を行った患者が,いずれ高齢者になっていることも必然的なことである.そこで,歯科インプラント治療を行う上で,口腔内の経年的変化にも対応できるように補綴治療およびインプラント周囲組織への対応を考慮していかなければならない.

  • 宮本 郁也, 吉岡 泉, 國領 真也, 阿部 亮輔, 角田 直子, 山谷 元気, 川井 忠, 山田 浩之
    原稿種別: 特集 インプラント治療における抜歯基準の再考
    2019 年 32 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/30
    ジャーナル フリー

    わが国は,どの国も経験したことのない超高齢社会を迎えた.このような背景で,医学的な問題をかかえた高齢患者に施行されたインプラント症例を目にする機会も多くなってきた.本稿では,口腔外科や口腔内科的にみた超高齢社会のインプラント症例における注意点について述べてみたい.

    インプラント周囲組織は,加齢とともに変化し入れ替わる.細胞が代謝し加齢変化していく中で臨床的に最も注意すべき事項は,細胞のがん化である.本邦では2人に1人が一生のうちがんに罹患する.インプラント周囲組織にも悪性腫瘍が発生しうることに注意が必要である.また,口腔とは関連のないがんに罹患した場合も,化学療法や放射線治療によりインプラント周囲組織に影響が出ることがある.

    加齢や疾病,治療に伴って身体は全身的,局所的に影響を受け,インプラント周囲組織も変化する.このため,われわれは患者の状況をよく理解したうえで最善の治療を継続的に提供する必要があろう.超高齢社会で求められる“安心なインプラント治療”はこのような観点からも検討する必要がある.

  • 玉岡 丈二, 髙岡 一樹, 岸本 裕充
    原稿種別: 特集 インプラント治療における抜歯基準の再考
    2019 年 32 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/30
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症や骨転移を有する悪性腫瘍患者に使用される骨吸収抑制薬の副作用として,骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)が知られている.骨吸収抑制薬投与患者における抜歯などの侵襲的な歯科処置にあたって注意を要するが,インプラント治療にあたっても同様である.骨吸収抑制薬を使用している患者は年々増加しており,インプラント治療適応の患者やインプラント埋入後のメインテナンス中に骨吸収抑制薬が開始される患者に遭遇する機会がある.

    骨吸収抑制薬投与患者へのインプラント埋入に関して明確な指針はないが,骨強度の評価や将来的なARONJ発症のリスクを含めて考慮すべきである.また,メインテナンス中に骨吸収抑制薬が開始されても十分な口腔管理がなされていれば,インプラントはARONJ発症のリスク因子とはなりにくいものの,インプラント周囲炎がある場合は感染を制御することが必要で,慢性炎症の持続がperi-implant ARONJの発症リスクとなる.口腔インプラント医はARONJの知識を備えるべきで,peri-implant ARONJの発症によって患者のQOLを低下させないよう努めなければならない.今後,インプラント治療が適応の骨吸収抑制薬投与患者は増加が予測され,さらなる臨床データの蓄積の下,骨吸収抑制薬投与とインプラント治療に関するガイドラインが作成されることを期待する.

特集 Back to the Basics(臨床の疑問に答える)Part Ⅰ
  • 金田 隆
    原稿種別: 特集 Back to the Basics(臨床の疑問に答える)Part Ⅰ
    2019 年 32 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/30
    ジャーナル フリー

    インプラント治療成功の要因は適切な顎骨の高さや幅,解剖学的構造物との適切な距離,たとえば下顎管や上顎洞および鼻腔等との関係などが重要である.エックス線CT(以下CTとする)検査の導入が欧米を中心に始まり,CTを用いないでインプラント治療を行う臨床医が非常に少数になりつつあるほど,インプラントのCT検査が普及してきている.CT利用によるインプラントの術前検査の有効な最大要因はコンピュータソフト利用による,顎骨のあらゆる方向からのCT断面像,クロスセクショナル画像,パノラマ再構成画像,三次元立体画像による術前診断である.今回の総説では,口腔インプラント治療をするうえでの基本的なCTの原理の理解や画像診断による鑑別診断の重要性,およびコンピュータソフト利用によるインプラント治療への臨床応用を述べる.

  • 井出 吉信, 松永 智, 阿部 伸一
    原稿種別: 特集 Back to the Basics(臨床の疑問に答える)Part Ⅰ
    2019 年 32 巻 1 号 p. 34-42
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/30
    ジャーナル フリー

    目的:歯科インプラント埋入時には,顎顔面領域の深部に盲目的にアクセスすることが多く,顎骨とその周囲組織の基本形態に加えて,歯を喪失した際の構造変化についても詳細に把握することが重要である.本論文では,歯科インプラント治療に必要不可欠である,上下顎の解剖学的構造について解説した.

    方法:試料は,東京歯科大学解剖学講座所蔵の有歯顎および無歯顎の実習用骨標本および解剖遺体を用いた.歯科インプラント治療に関係する部位の剖出を行い,外形および内部構造について分類,基礎的データを取得した.また,本講座がこれまで行ってきた研究データおよび国内外にて発表された関連データも併せて検討し,解説を行った.

    結果:顎骨内に内包されている,上顎洞,下顎管などは,歯科インプラント治療に特に重要な解剖学的構造物である.これらの三次元的位置関係は,エックス線画像診査などを駆使して事前に予測する必要がある.さらに,顎骨周囲に分布する脈管や神経の走行する「エリア」を把握し,ハイリスクであることを念頭に置きながら治療を進めることが必要である.

    結論:歯科インプラント治療において,「万が一」の事態を起こさないためには,有歯・無歯顎における部位的な特徴とヴァリエーションを三次元的に理解することが不可欠である.

原著(臨床研究)
  • 神田 省吾, 江原 雄二, 大西 吉之, 桑原 明彦, 松木 直人, 山上 哲贒
    原稿種別: 原著(臨床研究)
    2019 年 32 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/30
    ジャーナル フリー

    目的:今回,われわれは上顎臼歯部の補綴様式の違いが下顎皮質骨の厚みに与える影響について,コンピュータ診断支援システムを用いて調査し,若干の知見を得たので報告する.

    対象および方法:対象としては研究所所属の2施設において,2017年1月までに本研究に同意を得た45歳から90歳の平均年齢67.4歳の90名の女性となった.対象となった補綴物は,上顎臼歯部には片側ごとに135例の固定式補綴物,22例の可撤式補綴物であった.固定式補綴物の135例は,下顎臼歯部が56例の固定式補綴物,79例のインプラント支持補綴装置であった.それに対し22例の可撤式補綴物は,下顎臼歯部が18例の固定式補綴物,インプラント支持補綴装置は4例であった.なお問診にて骨粗鬆症あるいはビスフォスフォネート投薬中の患者は除外した.方法としては,上顎の片側ごとの補綴様式の違いに対する下顎下縁の皮質骨の厚さ(mandibular cortical width,以後MCW)をパノラマエックス線写真上でコンピュータ診断支援システム(Computer-aided  Diagnostic System:CAD) PanoSCOPE®を用いて計測した.

    結果:上顎が固定式補綴物の平均MCWは3.70 mm,可撤式補綴物の平均MCWが3.14 mmを示し,いずれも年齢とともに減少した.上顎臼歯部が固定式補綴物の平均MCWは固定式補綴物では3.84 mm,インプラント支持補綴装置では3.63 mmであり,いずれも年齢とともに減少していた.上顎臼歯部の補綴様式別のMCWでは,上顎臼歯部に135例の固定式補綴物のMCWは年齢とともに減少を示した.22例の可撤式補綴物のMCWは固定式補綴物と同様に年齢とともに減少を示した.

    結論:上顎に可撤式補綴物より固定式補綴物を装着している症例で,MCWが維持されていたことから,咬合力がMCWに影響を与えていたことが示唆された.

  • 上杉 崇史, 下尾 嘉昭, 石浦 雄一, 蛭田 賢, 中山 一久, 渡辺 多恵, 山田 一穂, 金 柔炅
    原稿種別: 原著(臨床研究)
    2019 年 32 巻 1 号 p. 48-56
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/30
    ジャーナル フリー

    目的:本邦では,上顎無歯顎症例において,4本のインプラント体を埋入し,即時荷重を行うAll-on-4 conceptに基づく治療に関する報告は少ない.本研究の目的は,上顎にAll-on-4 conceptに基づく治療を行い,上部補綴装置装着後3年以上経過した症例を評価することである.

    材料および方法:対象はAll-on-4 conceptに基づき咬合再構成を行った150例,662本である.1症例あたりの埋入本数,インプラント体の種類,長さ,埋入時の初期固定値,埋入部位,既往歴,喫煙習慣の有無について調査し,インプラント体の脱落に関与する要因を検討した.

    結果:インプラント体の脱落は17本に認められ,残存率は97.4%であった.埋入部位別では,左側後方傾斜埋入部位は右側前方埋入部位と比較し,有意に低い残存率であった.喫煙者は非喫煙者と比較し,有意に低い残存率であった.

    結論:All-on-4 conceptに基づいた治療は高いインプラント残存率を示し,臼歯部の残存歯槽骨量の少ない上顎無歯顎症例に対して,有効な治療方法の一つであることが示唆された.

原著(基礎研究)
  • 小澤 万純, 松田 哲, 草間 淳, 嶋田 淳
    原稿種別: 原著(基礎研究)
    2019 年 32 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/30
    ジャーナル フリー

    インプラントは有歯顎の補綴装置製作に比べ,より精度の高い印象採得が不可欠である.また,近年CAD/CAM等でフレームを一塊として製作することが可能になり,上部構造の精度に印象が与える影響が大きく正確な印象採得が必須となっている.今回われわれはインプラントの補綴装置製作にあたって,精度の高い印象を採得することを目的にエックス線を用いたインプラント印象採得時の誤差を検討した.エックス線による確認をした際にどのような条件で誤認が発現するのか検討するため,印象用コーピング─インプラント体間に厚さ10μm~100μmのセルロイドストリップスを挟み込んだものと,間隙なしのものをそれぞれプラットホームに対し水平方向から0度~25度の傾きで照射した.デジタルエックス線装置はCCDとIPを用い,撮影したエックス線写真を複数の歯科医師が無作為に間隙の有無を診断した.結果として,描出限界はIPよりもCCDのほうが優れていた.照射角度をつけた場合,IPでは5度を超えると間隙を認識できる者の割合に差が出はじめ,10度以上の角度になると誤認識者の割合が増加していた.CCDでは10度を超えると値に差が出はじめたが,15度以内からの照射であれば誤認識者の割合に大きな変化は認められなかった.インプラント印象採得時,エックス線を用いて印象用コーピングの適合を確認する際,インジケーター等を用い照射角度をプラットホームに対し水平方向から適切にエックス線を照射すべきである.

調査・統計・資料
  • 大村 友規
    原稿種別: 調査・統計・資料
    2019 年 32 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/30
    ジャーナル フリー

    目的:歯科インプラントが長期間安定して機能するためには,上部構造のパッシブフィットが重要な条件の一つである.スクリュー固定式上部構造はセメント残留リスクがなく,長期間メインテナンスを行う上でのトラブルに対応しやすい優れた方法ではあるが,製作手順が複雑であるためにパッシブフィットを得ることは術者や歯科技工士の技量に影響されやすい.今回,パッシブフィットが得やすく,審美的で破折を起こしにくいスクリュー固定式上部構造の製作方法を考案したので提案する.

    方法:既製のスクリュー固定用アバットメント上にスクリュー固定で支台歯形態の中間構造を製作し,さらにその上にアクセスホールを付与したブリッジ形態のフルジルコニア上部構造を製作する.それらを口腔内でセメント合着,さらに一旦外して余剰セメントを除去,研磨した上で装着する.

    結果:現在15例に応用し最長3年を経過したがすべて良好である.

    結論:スクリュー固定式上部構造製作にあたり,今回のフルジルコニアを用いたScrew Retain with Cementation法を用いることにより患者術者双方の負担を軽減し,審美性を確保した上でパッシブフィットを比較的容易に得ることができる.加えてインプラント周囲溝内へのセメント残留を生じない方法であると考えられる.

  • 田中 譲治, 村上 高宏, 菅野 岳志, 木村 健二
    原稿種別: 調査・統計・資料
    2019 年 32 巻 1 号 p. 71-79
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/30
    ジャーナル フリー

    近年,歯科インプラント補綴のためのデジタル技術は進展しており,その中でも,口腔内スキャナーが注目を浴びている.嘔吐反射を抑制し印象や石膏の硬化膨張による歪みの解消,感染性廃棄物を減少させるなどの多くの利点がある.現在,口腔内スキャナーは単独歯冠補綴または少数歯欠損などの固定性補綴装置の製作に広く用いられている.しかし,フルアーチインプラント症例への適応や義歯への応用に関しては,まだ不明な点が数多い.本稿では以下の口腔内スキャナーの種々の応用において,良好な結果を得たので報告する.

    口腔内スキャナーを用いたフルアーチインプラント症例.最終的なプロビジョナルレストレーションの形態を忠実に再現したインプラント上部構造を製作.抜歯後の動揺が大きい症例に対して抜歯後即時用サージカルガイドプレートを製作.インプラント埋入直後の光学印象によりプロビジョナルレストレーションを製作.歯槽堤粘膜の光学印象により3Dプリンターで全部床義歯を製作.既存義歯を口腔外で光学印象して複製義歯(コピーデンチャー)を製作.

    以上のことから,口腔内をスキャナーは,単独歯冠あるいは少数歯欠損症例だけでなく,フルアーチインプラント症例にも応用が可能で,抜歯後即時インプラント症例のプロビジョナルレストレーション,サージカルガイドプレート製作応用,および,全部床義歯の製作などにおいても適応され種々の臨床応用が可能であることが示唆された.

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