2019 年 32 巻 3 号 p. 197-203
わが国は,総人口が減少しているのにもかかわらず高齢人口が増加し続け,それが今後も長期間続く.2040年には,高齢人口対生産年齢人口が2対3になり,社会保障費が現在の1.6倍になると予測されている.このような超少子高齢社会は,それを担う人材と財源の両面で,きわめて脆弱な状態である.
インプラント治療を受けたのち,高齢期に患者の運動機能や認知機能は低下する.今後,要介護者の口腔内には,多くの歯のみならず,インプラントも残される.インプラント治療を受ける年齢は,50~70歳代前半が多いとされているが,術後の70歳代には,40%が糖尿病の可能性があり,女性の40%が骨粗鬆症になる.またこの割合は加齢とともにさらに増加し,インプラント喪失リスクが上昇する.また,80歳後半では男性の1/3,女性の半数が,主に脳血管障害と認知症を原因とした要介護状態になり,患者自身によるメインテナンスは期待できない.一方,高齢者の口腔衛生管理を行う介護者もまた,主に高齢の家族であり,いわゆる老々介護である.
後年のより厳しい日本にできるだけ負担を残さないため,インプラント治療を行う歯科医師には,必ず起こる未来の現実への直視と,一生涯にわたるインプラントの管理の覚悟とが求められる.