日本口腔インプラント学会誌
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原著(臨床研究)
上顎洞粘膜厚と洞粘膜穿孔に影響するリスク因子に関するCBCTによる検討
山口 菊江宗像 源博佐藤 大輔下尾 嘉昭石浦 雄一
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2020 年 33 巻 4 号 p. 342-350

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抄録

目的:上顎洞底挙上術は,予知性の高い治療方法として確立している一方,術中の洞粘膜の穿孔や術後の炎症や感染による上顎洞炎の発症などの報告も多い.本研究では,上顎洞底挙上術の適応や術中の洞粘膜穿孔に影響を与える洞粘膜厚と術中の合併症として高頻度に生じる洞粘膜穿孔に与えるリスク因子について,CBCTにて検討を行った.

方法:2018年4月から2020年3月までに,上顎臼歯部欠損部に対してラテラルアプローチによる上顎洞底挙上術を施行した患者を対象とした.調査項目として,洞粘膜厚に関して年齢,喫煙,鼻中隔弯曲,性別,抜歯後の治癒期間,抜歯原因,既存骨量の7項目との関連性について,洞粘膜穿孔に関して既存骨量,術前洞粘膜厚,喫煙,性別,欠損形態(中間・遊離端欠損),抜歯後の治癒期間,PNR角の7項目との関連性について検討した.

結果:患者は31名(男性10名,女性21名),36洞,平均年齢は59.2歳であった.また,平均既存骨量は2.12±1.03 mm

であった.洞粘膜厚の平均は1.00±1.23 mmであり,洞粘膜厚>2 mm率は22.2%であった.洞粘膜厚の増加リスク因子として,男性および抜歯後の治癒期間<1年が関与している結果となった.洞粘膜穿孔のリスク因子として,既存骨量<

1.5 mm,抜歯後の期間<6カ月,PNR角<90°が関与している結果となった.

結論:ラテラルアプローチによる上顎洞底挙上術を行う際には,性別および抜歯後の治癒期間,既存骨量,PNR角に留意する必要がある.

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© 2020 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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