日本口腔インプラント学会誌
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33 巻, 4 号
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総説
  • 谷岡 款相, 谷城 博幸
    原稿種別: 総説
    2020 年33 巻4 号 p. 313-323
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

    歯科診療で使用される医療機器は,薬機法に基づき,製造販売の承認等が認められた製品である.歯科医療従事者にとっては,既承認などの医療機器を使用する立場にあるが,上市前の承認等プロセスやそのプロセスにおける歯科医療機器の特徴などについて不明な点も多い.また,医療機器の規制に組み込まれた医療機器プログラムなど,歯科領域のみならず他業種からの参入を考える企業にとっても,同様な不明点は多いと考えうる.

    医療機器の承認にあたっては,独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が審査を行う承認審査のプロセスがある.その審査プロセスでは,患者の治療や診断における効能や効果などの臨床的有効性や,それらを使用するうえで不可欠な臨床的安全性を審査する.薬機法における医療機器の規制とともに,この承認審査のプロセスを理解することは,日常診療などにおける医療機器の適切な使用目的や効果について,一層の理解を深めるための有益な情報になりうる.

    本稿では,薬機法における医療機器の位置付け,医療機器の安全性リスクに鑑みたクラス分類,医療機器の承認審査などのプロセスの概要,品質および安全性にかかわる規制の枠組み,歯科口腔領域の医療機器の審査や歯科医療にかかわる他規制との関係などについて解説する.また,歯科口腔領域の医療機器にもかかわる医療機器規制の展望についても解説する.

特集 インプラント治療におけるデジタルとアナログ
  • 井汲 憲治, 尾関 雅彦
    原稿種別: 特集 インプラント治療におけるデジタルとアナログ
    2020 年33 巻4 号 p. 324
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー
  • 梅田 和徳
    原稿種別: 特集 インプラント治療におけるデジタルとアナログ
    2020 年33 巻4 号 p. 325-329
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

    デジタルデンティストリーは,歯科治療のクオリティや安全性を向上させ,歯科医業のワークフローそのものをスピーディーかつ根本的に変化させている.

    インプラント治療においては,デジタライゼーションされたことで事前情報の活用範囲は一気に広がり,治療プロトコールが大きく変化し,治療期間は短縮し手術回数が減り,低侵襲治療を実現できている.修復や補綴の分野では強度がある審美性の高い材料の出現で,健全歯質へのダメージを減らすことができた.アライナー矯正の分野は,口腔内スキャナーを使用したデジタルデータでアライナー作製を行っている.さらにはそのデータを加工し,患者へのプレゼンテーションにも活用し始めている.

    今後さらにデジタル化が進むと,歯科医師の役割そのものを考え直すことが必要になってくるようになるかもしれない.

  • 上浦 庸司, 白鳥 香理, 出張 裕也, 加藤 森之
    原稿種別: 特集 インプラント治療におけるデジタルとアナログ
    2020 年33 巻4 号 p. 330-341
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

    近年のデジタル機器の発展により,患者説明ではスマイルデザイン(2D,3D)により患者への動機付けを図り,治療の承諾を得ることが可能となった.その後,診査・診断ではCBCTとMRIによる中心位を基本とした顎関節診査,側貌セファロによる骨格診査(咬合平面,咬合高径)など顎骨格系の三次元的診断を行い,補綴・矯正・顎矯正の必要性を検討する.診査と相まってCBCT,口腔内スキャナー,ガイドシステム,顔貌3Dカメラなど歯科関連デジタル機器により,臨床家の念願であった顔貌主導(顔貌との調和を考慮した)インプラント修復治療の計画を立案する.この修復治療は従来の“骨主導”→“修復主導”→“顔貌主導”へとより高度なTop Down Treatmentへと変遷しており,予後良好かつ患者満足度の高い治療法であると考えられる.

原著(臨床研究)
  • 山口 菊江, 宗像 源博, 佐藤 大輔, 下尾 嘉昭, 石浦 雄一
    原稿種別: 原著(臨床研究)
    2020 年33 巻4 号 p. 342-350
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

    目的:上顎洞底挙上術は,予知性の高い治療方法として確立している一方,術中の洞粘膜の穿孔や術後の炎症や感染による上顎洞炎の発症などの報告も多い.本研究では,上顎洞底挙上術の適応や術中の洞粘膜穿孔に影響を与える洞粘膜厚と術中の合併症として高頻度に生じる洞粘膜穿孔に与えるリスク因子について,CBCTにて検討を行った.

    方法:2018年4月から2020年3月までに,上顎臼歯部欠損部に対してラテラルアプローチによる上顎洞底挙上術を施行した患者を対象とした.調査項目として,洞粘膜厚に関して年齢,喫煙,鼻中隔弯曲,性別,抜歯後の治癒期間,抜歯原因,既存骨量の7項目との関連性について,洞粘膜穿孔に関して既存骨量,術前洞粘膜厚,喫煙,性別,欠損形態(中間・遊離端欠損),抜歯後の治癒期間,PNR角の7項目との関連性について検討した.

    結果:患者は31名(男性10名,女性21名),36洞,平均年齢は59.2歳であった.また,平均既存骨量は2.12±1.03 mm

    であった.洞粘膜厚の平均は1.00±1.23 mmであり,洞粘膜厚>2 mm率は22.2%であった.洞粘膜厚の増加リスク因子として,男性および抜歯後の治癒期間<1年が関与している結果となった.洞粘膜穿孔のリスク因子として,既存骨量<

    1.5 mm,抜歯後の期間<6カ月,PNR角<90°が関与している結果となった.

    結論:ラテラルアプローチによる上顎洞底挙上術を行う際には,性別および抜歯後の治癒期間,既存骨量,PNR角に留意する必要がある.

  • 山口 菊江, 宗像 源博, 片岡 有, 下尾 嘉昭, 佐藤 大輔
    原稿種別: 原著(臨床研究)
    2020 年33 巻4 号 p. 351-359
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

    目的:上顎洞底挙上術を施行するうえで,上顎洞炎を含む術後感染は最も重篤な合併症である.インプラント治療に伴う上顎洞炎は,手術操作に伴う局所炎症や上顎洞の粘液繊毛機能の低下や細菌などによる感染,それに伴う自然口やいわゆる中鼻道自然口ルートの閉塞により発症する.そこで,上顎洞底挙上術前後の洞粘膜厚の変化と術後洞粘膜厚の増加に影響する因子について検討を行った.

    方法:上顎臼歯部欠損部に対してラテラルアプローチによる上顎洞底挙上術を施行した患者を対象とし,術前後の洞粘膜厚の変化と術後洞粘膜厚に影響する因子(11項目)に関して統計学的検討を行った.

    結果:患者は28名(男性9名,女性19名),31洞,平均年齢は59.5歳であった.また,術前洞粘膜厚の平均は1.04±1.17 mm,術後7日以内の平均洞粘膜厚は6.40±3.90 mm,術後8~14日以内の平均洞粘膜厚は6.96±3.59 mmであった.術後洞粘膜厚に影響を与える因子として,術前洞粘膜厚,年齢,鼻中隔弯曲および抜歯後の期間が関与している結果となった.

    結論:1.術後洞粘膜厚は,術前と比較して術後14日まで有意に増加する傾向を示した.

    2.術後洞粘膜厚は術前洞粘膜厚,年齢,抜歯後の期間,鼻中隔弯曲の影響を強く受ける.

    上顎洞底挙上術を施行する際には,術前洞粘膜厚のみならず,年齢や抜歯後の期間や鼻中隔弯曲も考慮した治療計画を立案する必要がある.

  • 小澤 万純, 松田 哲, 斎藤 大嵩, 嶋田 淳
    原稿種別: 原著(臨床研究)
    2020 年33 巻4 号 p. 360-365
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,インプラント体の表面性状の違いが隣接するインプラント間の骨吸収に影響を与えているのか評価することである.

    対象および方法:明海大学PDI東京歯科診療所において,2004~2014年までにインプラント治療を行った者のなかから,同一表面性状のインプラントを隣接して2本以上埋入した患者のなかから上部構造装着後3年以上経過した者を抽出し,表面性状の違う2群に分け放射線学的測定を行った.比較したインプラントの表面性状は,プラットフォームから3 mmが機械加工,先端までが粗面加工のもの(A群)と,プラットフォームから先端まで粗面加工のもの(B群)を使用した.隣接するインプラント間距離による比較も行い,各項目の比較にはMann-WhitneyのU検定を行った.

    結果:インプラント間距離が3 mm以上の群において,B群のほうが水平的骨吸収量,垂直的骨吸収量ともに小さい傾向にあった.しかしながら,インプラント間距離が3 mm未満の群ではAB群双方の間での差がないことがわかった.

    考察および結論:今回の研究では,インプラント表面性状の違いによる骨吸収の統計学的有意差を認めた.しかしながら,インプラント間距離が3 mm未満の群では表面性状の違いによる影響を受けていないことがわかった.インプラント間の骨吸収の保全には,全面が粗面加工されたインプラント体を用い,適切な距離を保つことが有効であると考える.

原著(基礎研究)
  • 関矢 泰樹, 河野 恭範, 松田 健男, 伊藤 聖, 片平 信弘, 臼井 龍一, 松原 正典, 伊藤 充雄
    原稿種別: 原著(基礎研究)
    2020 年33 巻4 号 p. 366-374
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は,カンチレバーを付与したインプラントの傾斜角度が最大曲げ荷重,変形量およびカラー部のひずみに及ぼす影響について検討することを目的に行った.

    方法:上部構造は下顎第一大臼歯の近遠心の幅径(12 mm)を模し,荷重を負荷するために両端に3.25 mmを加え全長18.5 mmとした.傾斜角度については傾斜なし,10°,20°と30°の4種類で行った.インプラント体のカラー部の先端部にひずみゲージを貼り付け,上部構造の端面から3.25 mmの部分に荷重を負荷し,各測定を行った.

    結果および考察:傾斜なしの最大曲げ荷重は約609 Nであり,傾斜10°は約18%,傾斜20°は約21%,傾斜30°は約31%それぞれ傾斜角度なしと比較して減少した.変形量は傾斜角度が増加するほど大きくなった.CTによる内部観察の結果,カラー部とアバットメントの隙間は傾斜角度が増加するほど広くなる傾向であった.また,スクリューの上部は塑性変形していたが破折は観察されなかった.カラー部のひずみが0.1%に達したのは,傾斜20°と傾斜30°ともに負荷荷重150 Nであった.傾斜角度が増加するほどカラー部のひずみは大きくなり,すべての傾斜角度でひずみが0.1%に達したのは荷重250 Nであった.傾斜なしと傾斜10°のカラー部のひずみは,すべての荷重において差が認められなかった.

    結論:本研究におけるカンチレバーを付与したインプラントの傾斜角度の限界は,傾斜なしとひずみに差が認められなかった10°であることが明らかとなった.

症例報告
  • 添島 義樹, 山本 勝己, 堀川 正, 添島 英輔, 伊東 隆利, 横上 智, 松浦 正朗
    原稿種別: 症例報告
    2020 年33 巻4 号 p. 375-381
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

    緒言:Kennedy分類Ⅰ級およびⅡ級の部分無歯顎患者にインプラント支持の可撤性補綴装置(implant-supported prosthetic appliance:以下ISPAと略す)を用いれば,従来の可撤性部分床義歯と比べて義歯の安定が図られ,咀嚼機能を回復することができるとされている.

    今回,ISPAで治療したKennedy分類Ⅰ級およびⅡ級の部分無歯顎患者での治療結果について,若干の文献的考察を加えて報告する.

    症例の概要:11例の患者がISPAで治療された.患者の平均年齢は64.5歳で,性別は女性が9例,男性は2例で,3例は下顎,8例は上顎の多数歯欠損(8歯以上の欠損)であった.11例の患者に合計33本のインプラント体が埋入され,5種類のアタッチメント(磁性アタッチメント3例,ロケーター2例,ミリングされたヒーリングアバットメント2例,バーとクリップ2例,歯冠外アタッチメント2例)が使用された.治療後の経過観察期間は41~183カ月(平均97カ月)であった.喪失したインプラント体はなく,インプラント体と上部構造の残存率は100%であった.11例中3例では補綴的合併症は起こらなかったが,8例では義歯床の破折,人工歯の摩耗,マグネットの脱離などの機械的合併症が起こり,2本の支台歯が抜歯された.しかし,いずれの機械的合併症も修復できるものであった.

    結論:ISPAは多数歯欠損症例に対し,治療経過が予測可能な低侵襲の治療法であることが示唆された.

調査・統計・資料
  • 山根 晃一, 三浦 由里, 山根 進
    原稿種別: 調査・統計・資料
    2020 年33 巻4 号 p. 382-388
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

    本実験の目的は,合併症でセメント固定の上部構造を撤去する状況に遭遇したとき,いかに迅速に撤去する方法を見いだすかということにある.以前,臨床で使用したCAD/CAMデータでジルコニア上部構造およびチタンアバットメントを作製し,インプラント体とチタンアバットメントをスクリュー固定し,その上にジルコニア上部構造をセメント固定した石膏模型で実験を行った.方法として,CADデータの画像を用い,セメント固定式ジルコニア上部構造とアバットメントを一塊としてインプラント体から撤去し,さらにオートファーネスを用いジルコニア上部構造をチタンアバットメントから撤去した.

    セメントはレジン添加型グラスアイオノマーセメントおよびレジンセメントを使用した.セメント加熱崩壊が上部構造をアバットメントから撤去することに関与していると考えられることから,撤去実験の前にオートファーネスを用いてセメントの加熱処理変化を調べた.セメント塊が崩壊した最短係留時間(炉外+炉内)は,レジン添加型グラスアイオノマーセメント350℃で18分(8分+10分),400℃で6分(0分+6分),レジンセメント400℃で10分(0分+10分)であった.

    オートファーネスにおいて,この最短係留時間でセメント固定したジルコニア上部構造をチタンアバットメントから撤去することができ,さらに再利用の可能性も示唆された.

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