2020 年 33 巻 4 号 p. 382-388
本実験の目的は,合併症でセメント固定の上部構造を撤去する状況に遭遇したとき,いかに迅速に撤去する方法を見いだすかということにある.以前,臨床で使用したCAD/CAMデータでジルコニア上部構造およびチタンアバットメントを作製し,インプラント体とチタンアバットメントをスクリュー固定し,その上にジルコニア上部構造をセメント固定した石膏模型で実験を行った.方法として,CADデータの画像を用い,セメント固定式ジルコニア上部構造とアバットメントを一塊としてインプラント体から撤去し,さらにオートファーネスを用いジルコニア上部構造をチタンアバットメントから撤去した.
セメントはレジン添加型グラスアイオノマーセメントおよびレジンセメントを使用した.セメント加熱崩壊が上部構造をアバットメントから撤去することに関与していると考えられることから,撤去実験の前にオートファーネスを用いてセメントの加熱処理変化を調べた.セメント塊が崩壊した最短係留時間(炉外+炉内)は,レジン添加型グラスアイオノマーセメント350℃で18分(8分+10分),400℃で6分(0分+6分),レジンセメント400℃で10分(0分+10分)であった.
オートファーネスにおいて,この最短係留時間でセメント固定したジルコニア上部構造をチタンアバットメントから撤去することができ,さらに再利用の可能性も示唆された.