2020 年 33 巻 4 号 p. 375-381
緒言:Kennedy分類Ⅰ級およびⅡ級の部分無歯顎患者にインプラント支持の可撤性補綴装置(implant-supported prosthetic appliance:以下ISPAと略す)を用いれば,従来の可撤性部分床義歯と比べて義歯の安定が図られ,咀嚼機能を回復することができるとされている.
今回,ISPAで治療したKennedy分類Ⅰ級およびⅡ級の部分無歯顎患者での治療結果について,若干の文献的考察を加えて報告する.
症例の概要:11例の患者がISPAで治療された.患者の平均年齢は64.5歳で,性別は女性が9例,男性は2例で,3例は下顎,8例は上顎の多数歯欠損(8歯以上の欠損)であった.11例の患者に合計33本のインプラント体が埋入され,5種類のアタッチメント(磁性アタッチメント3例,ロケーター2例,ミリングされたヒーリングアバットメント2例,バーとクリップ2例,歯冠外アタッチメント2例)が使用された.治療後の経過観察期間は41~183カ月(平均97カ月)であった.喪失したインプラント体はなく,インプラント体と上部構造の残存率は100%であった.11例中3例では補綴的合併症は起こらなかったが,8例では義歯床の破折,人工歯の摩耗,マグネットの脱離などの機械的合併症が起こり,2本の支台歯が抜歯された.しかし,いずれの機械的合併症も修復できるものであった.
結論:ISPAは多数歯欠損症例に対し,治療経過が予測可能な低侵襲の治療法であることが示唆された.