日本口腔インプラント学会誌
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特集 インプラント周囲炎の病因論とトータルマネージメント
歯周病患者に対する口腔インプラント治療の科学知と実践知の融合を目指して
高橋 慶壮山﨑 幹子
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2021 年 34 巻 3 号 p. 199-205

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抄録

著者らは歯周炎により歯を失った患者に対して包括的な歯周治療および口腔インプラント治療を行い,長期的な予後を評価している.

患者をそれぞれStage (Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ)およびGrade (A,B,C)群に細分類した.治療結果を成功と失敗に分け,インプラント周囲骨吸収量(marginal bone loss;MBL)3 mm未満を「インプラント治療の成功」と定義した.一方,インプラント治療の失敗を4群(MBL 3 mm以上,インプラント周囲炎,インプラント周囲炎による脱落およびオッセオインテグレーションの喪失)に細分類した.インプラント機能期間,インプラント埋入本数,骨増大術の有無,インプラントブランドおよび上部構造の特徴をStageおよびGrade群間で比較・検討した.

StageⅣおよび骨増大術併用群ではインプラント周囲疾患の罹患率が有意に高かった.StageⅢ群およびGrade C群で骨増大術を併用した確率が有意に高かった.オッセオインテグレーションの喪失群はインプラント周囲炎群とは異なる特徴を示し,インプラントブランド,骨増大術の有無およびシングルインプラントによる補綴治療群で有意に高く,逆に機能期間は有意に短かった.重度歯周炎患者に対しては骨増大術の併用率および埋入本数が高くなるため,治療および術後管理の難易度とインプラント体に加わる咬合力が増すのであろう.

歯周炎のStageおよびGradeはインプラント周囲疾患のrisk indicatorである.重症歯周炎患者に対しては,精密な歯周治療およびインプラント治療が必要である.

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© 2021 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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