日本口腔インプラント学会誌
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特集 インプラント周囲炎の病因論とトータルマネージメント
インプラント周囲炎に対する非外科的および外科的治療の有効性について:インプラント周囲炎治療30年の臨床的評価
松井 孝道
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2021 年 34 巻 3 号 p. 206-219

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抄録

インプラント周囲炎の治療は非外科的治療と外科的治療に大別される.インプラント周囲炎の病態はさまざまで,エックス線像における骨吸収が顕著で臨床的に感染が進行している場合でも非外科的治療で改善する場合がある.そのため骨吸収が著明に認められる場合でも,すぐに外科的治療や撤去を選択せず非外科的治療を累積的に行う.すなわちデブライドメント,殺菌洗浄,光線力学療法,抗菌剤療法などの非外科的治療を累積的に組み合わせ,インプラント周囲組織の反応をみる.そこで少しでも改善が認められれば非外科的治療を継続する.しかし,排膿が続きインプラント周囲組織の改善が認められなければ外科的治療に移行する.

外科的治療を行ううえで重要になってくるのが汚染されたインプラント表面の除染である.特に感染が長期に及び骨吸収が高度になると,インプラント体粗糙面にはバイオフィルムなどの有機物以外に強固に付着してくる石灰化物も認められる.そのため,石灰化物も含めた除染がインプラント周囲炎の治療における要となってくる.手法によっては除染効果の低いものや,治療後チタンインプラント表面に異種元素を残留させ治療法として適切でないものもある.

今回,過去30年間に行ったすべてのインプラント周囲炎治療218本に対する非外科的および外科的治療の有効性を検討し臨床的な評価を行ったところ,非外科的治療の治療有効率は60.0%,外科的治療を併用すると治療有効率は77.5%であった.

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© 2021 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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