2022 年 35 巻 2 号 p. 125-132
目的:本研究はインプラントカラー部の厚さを変化させカンチレバーを付与し,最大曲げ荷重,変形量およびカラー部のひずみに対する影響について検討することを目的とした.
材料および方法:上部構造は下顎第一大臼歯の近遠心の幅径(12 mm)をモデルとし,荷重の負荷点として両端に3.25 mmを加え,JIS-SK4の鋼を用い全長18.5 mmに加工を行った.カラー部先端の厚さ(mm)は0.7(T07),0.8(T08),0.9(T09)の3種類についてJIS 4種チタンを用い加工を行った.インプラントの傾斜角度は30°とし,最大曲げ荷重,変形量およびひずみの測定を行った.測定後CTを用いて内部観察を行った.
結果および考察:T07の最大曲げ荷重(N)は387.3,T08は402.9,T09は414.5であった.カラー部の厚さが増加すると最大曲げ荷重は大きくなった(p<0.05).変形量(mm)はT07が1.86,T08は1.82,T09は1.52であった.T09は最も変形量が少ない結果であった(p<0.05).ひずみ0.1%を生じたのはT07およびT08への荷重150 Nであり,T09は荷重200 Nであった.ひずみ0.3%はT07およびT08で荷重350 Nの場合に生じた.T09のひずみは荷重400 Nで0.3%以下であった(p<0.05).CTによる観察の結果,各インプラントのアバットメントの一部が切削粉末の排出孔に塑性変形し侵入していた.アバットメントと嵌合するカラー部の先端には隙間が認められ,T07が最も大きく観察された.
結論:カンチレバーが付与されたインプラントのひずみはカラー部の厚さに影響されることから,植立する部位の咬合力を考慮する必要があることが示唆された.