1993 年 42 巻 5 号 p. 346-358
Candida antarcticaにより生産されるバイオサーファクタント (マンノシルエリトリトールリピッド, MEL) について, 種々の基質を用いその脂肪酸代謝を調べた!偶数鎖長の基質を用いた場合には, C8, C10, C12の脂肪酸が主成分となっていた。また, 奇数鎖長の基質を用いた場合には, C7, C9, C11 の脂肪酸が主成分となっていた。さらに, リノール酸メチル基質とした場合には, trans-3-デセン酸とcis-4-デセン酸が不飽和脂肪酸の主成分となっていた。一方, 菌体内の主要脂質であるトリアシルグリセリンについて同様に脂肪酸組成を調べたところ, その構成脂肪酸は用いる基質の鎖長により大きく変化することがわかった。実験結果より, 脂肪酸代謝経路は菌体外糖脂質である MEL と菌体脂質では明らかに異なっており, さらに MEL 中の大部分の中鎖脂肪酸は, 与えた基質のβ酸化中間体であることが判明した。MELの脂肪酸合成には, 従来微生物で知られている脂肪酸代謝経路とは異なる “鎖長短鎖化経路” (不完全型β酸化) が関与していることが示された。また, 本結果に見られるような糖脂質生合成に直接関与する “鎖長短鎖化経路” の存在は, これまでに報告のないものであった。