2022 年 35 巻 2 号 p. 83-91
本邦では口腔外科や補綴,歯周病のいずれかに軸足を置く歯科医師がインプラント治療を担当することが多いように思われる.そのため,特に自身がメインフィールドとする領域以外の治療において正確な難易度を判定する手法があれば,安心安全なインプラント治療を提供することができると考えられる.
現在,いくつかのインプラント治療難易度判定ツールが提案されているが,これまでに用いられてきた種々の分類法では難易度をうまく表現できない問題も存在する.たとえば,骨の質,量ともに問題なく咬合にも問題ない下顎臼歯部1歯中間欠損などはイージーケースといっても差し支えないと思われるが,一方で未経験者にとっては,骨をドリリングすること自体が難しく感じられるだろう.このように,ある症例が簡単か難しいかは,術者の感じ方や経験で大きく異なる.また,このような術者間で感じ方に差がある技術的難易度とは別個に,全身状態や治療部位,患者の個性に基づく難易度が存在する.これらの項目に問題がある場合にインプラント治療の成功率が低下することは,多くの場合質が高いエビデンスで裏づけされている.
日本口腔インプラント学会研究推進委員会では,Evidence-Based Difficulty Assessment Toolともいえる,術者の経験によらないインプラント治療の難易度分類を試みている.本稿ではその試案を提示する.