2023 年 36 巻 3 号 p. 171-176
磁気共鳴画像撮像法(Magnetic resonance imaging:MRI)は,原子核の磁気共鳴現象を利用した撮像法である.臨床用MRIでは,主に水素原子核の磁気共鳴現象を利用し,生体内の水素原子核の密度や存在状態の違いを画像化する.MRIは,エックス線のような電離放射線を使用しないため被曝がない.また,CTと比べ軟組織のコントラスト分解能が高い.そのため,MRIは非侵襲的で,軟組織病変の診断に有用な画像検査法として広く利用されており,検査件数は増加の一途をたどっている.
しかし,MRI装置は強力な磁場装置であるため,磁石に吸引される強磁性体を検査室内へ持ち込まないよう,また,体内に金属や医療デバイスが入っている場合は検査前にMRIに対する適合性を確認するなど,細心の注意が必要である.
最近では,患者ニーズに応えMRI対応の医療デバイスが増えてきた.口腔領域においても,腫瘍や唾液腺疾患,顎関節症の診断などではMRI検査が第一選択となるため,歯科治療に際して,安全にMRI検査が可能で,さらにMR画像に影響しない歯科材料の使用が望まれる.そのためにはまず,MRIについて正しく理解することが重要である.本総説では,MRIの原理と特徴について概説する.