日本口腔インプラント学会誌
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36 巻, 3 号
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特集 上顎インプラントオーバーデンチャーを成功に導くための条件とは?
  • 田中 譲治, 正木 千尋
    原稿種別: 特集 上顎インプラントオーバーデンチャーを成功に導くための条件とは?
    2023 年 36 巻 3 号 p. 145
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー
  • 岩城 麻衣子, 金澤 学
    原稿種別: 特集 上顎インプラントオーバーデンチャーを成功に導くための条件とは?
    2023 年 36 巻 3 号 p. 146-150
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    下顎無歯顎患者に対する2-IOD(インプラントオーバーデンチャー)に明確なコンセンサスが得られている一方で,上顎無歯顎患者に対するインプラントオーバーデンチャー(IOD)についてはまだ明確なコンセンサスは得られていない.上顎IODに関する臨床研究はまだ非常に数が少ないが,1997年から2009年までの初期に発表された論文では残存率が61~84%と低い傾向が認められる.これは,機械研磨のインプラントが使用されていたことが原因であったと推察される.2013年以降,4-IODと6-IODを比較した無作為化臨床研究では,両介入に有意差が認められなかったことが報告された.また,2019年以降,インプラントの連結,非連結を比較した臨床研究から有意差が認められなかったことが報告された.これまでの報告から,上顎IODは4本のスタンダードインプラントが基本とされており,上下無歯顎の場合,連結/非連結に有意差は認められないが,対合が天然歯または固定性補綴装置が装着されている場合,連結にしたほうが良い可能性が高いと考えられる.また,上顎IARPDに関しては,いまだエビデンスの蓄積が必要な分野である.

  • 亀田 行雄
    原稿種別: 特集 上顎インプラントオーバーデンチャーを成功に導くための条件とは?
    2023 年 36 巻 3 号 p. 151-159
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    加齢とともに現在歯数が減少する際に,下顎に比べ上顎歯の喪失スピードが速い症例がある.そのような症例に対し治療介入しても,上顎歯の減少を食い止めることができず咬合崩壊してしまうこともある.そのような上減の歯列と呼ぶ症例に対しては,より徹底した治療介入が必要であり,主に「臼歯部の咬合再建」と「上顎前歯部の補強」に注力することが望ましい.また臼歯部の咬合再建の一手法として,上顎の義歯床下にインプラントを埋入するIARPD(Implant AssistedRemovable Partial Denture)も有効と考える.

  • 永田 省藏
    原稿種別: 特集 上顎インプラントオーバーデンチャーを成功に導くための条件とは?
    2023 年 36 巻 3 号 p. 160-169
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    臨床において,上顎のインプラントオーバーデンチャー(IOD)を希望される症例では,普通の食品でも食べにくいという機能障害,義歯の不安定,吸着不良といった補綴装置への不満などが多い.一般に,歯の喪失により上顎顎堤は外側から吸収することから,歯列弓は小さくなる傾向にある.その結果,上下顎の対向関係が悪化し,上顎総義歯は不安定となり,力学的な問題点を抱えることになる.また,上顎無歯顎前方部では顎堤の条件も不良な例が多く,生物学的な問題を抱える例が多いように感じる.そのような不利な条件にある上顎無歯顎IODでは,術後経過において問題をきたす例も経験した.以上の点から,上顎の欠損が進行し,無歯顎に向かう前段階において,歯列を改変する策が必要であると考える.欠損歯列に少数のインプラントを適用したImplant assisted removable partial denture(IARPD)の臨床例を提示し,そのあり方を考えてみたい.

特集 いま問われるMRI 検査への対応
  • 金田 隆, 森本 泰宏
    原稿種別: 特集 いま問われるMRI検査への対応
    2023 年 36 巻 3 号 p. 170
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー
  • 角 美佐
    原稿種別: 特集 いま問われるMRI検査への対応
    2023 年 36 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    磁気共鳴画像撮像法(Magnetic resonance imaging:MRI)は,原子核の磁気共鳴現象を利用した撮像法である.臨床用MRIでは,主に水素原子核の磁気共鳴現象を利用し,生体内の水素原子核の密度や存在状態の違いを画像化する.MRIは,エックス線のような電離放射線を使用しないため被曝がない.また,CTと比べ軟組織のコントラスト分解能が高い.そのため,MRIは非侵襲的で,軟組織病変の診断に有用な画像検査法として広く利用されており,検査件数は増加の一途をたどっている.

    しかし,MRI装置は強力な磁場装置であるため,磁石に吸引される強磁性体を検査室内へ持ち込まないよう,また,体内に金属や医療デバイスが入っている場合は検査前にMRIに対する適合性を確認するなど,細心の注意が必要である.

    最近では,患者ニーズに応えMRI対応の医療デバイスが増えてきた.口腔領域においても,腫瘍や唾液腺疾患,顎関節症の診断などではMRI検査が第一選択となるため,歯科治療に際して,安全にMRI検査が可能で,さらにMR画像に影響しない歯科材料の使用が望まれる.そのためにはまず,MRIについて正しく理解することが重要である.本総説では,MRIの原理と特徴について概説する.

  • 香川 豊宏, 白石(筑井) 朋子, 稲冨 大介
    原稿種別: 特集 いま問われるMRI検査への対応
    2023 年 36 巻 3 号 p. 177-184
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    核磁気共鳴撮像法(MRI)は,磁場を用いて生体の断面像を取得する非侵襲的な診断技術である.しかし,アーチファクトという現象があり,誤った信号が検出されることがある.主要なアーチファクトは,モーションアーチファクト,パーシャルボリューム効果および磁化率アーチファクトの3つである.

    モーションアーチファクトは,患者の動きにより画像がぼやける現象であり,検査時の頭部固定が重要である.

    パーシャルボリューム効果は,MRIデータの平均化により信号が異なる状態で画像化される現象である.スライス厚を薄くすることで抑制することができるが,信号対雑音比(S/N比)の低下が問題となる.

    磁化率アーチファクトは,生体内の磁化率の差が大きい部位で発生し,磁化率が高い物質が原因となる.歯科領域では,口腔内の人工物が発生源となることが多い.特に,矯正用ワイヤーや磁性アタッチメントには注意が必要である.

    これらのアーチファクトを理解し,適切に対処することで,MRIを効果的に活用し,正確な診断につなげることが可能となる.

  • 箕輪 和行
    原稿種別: 特集 いま問われるMRI 検査への対応
    2023 年 36 巻 3 号 p. 185-189
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    磁気共鳴画像撮像法(Magnetic resonance imaging:MRI)において歯科口腔領域は修復補綴装置に伴う金属アーチファクトで,画像劣化が見られる領域である.

    金属アーチファクトはMRI における磁化率アーチファクトの一つである.金属,特に鉄やコバルト,ニッケルなどの強磁性体を装着している患者のMRI は歪みが顕著である.磁性体金属の影響は画像の歪みだけではなく,金属自体の発熱,磁力に伴う磁性体の位置変化などが人体に対する問題となる.

    一方,金属のうち磁場にさらしても磁化しない非磁性体金属(チタン,金,銀,パラジウムなど)は,MRI 検査に対して安全な金属とされている.

    保険導入された磁性アタッチメントを含め,すべての歯科用磁性体金属は,磁性体の含有量と性質によって異なるが,頭蓋底から咽頭部領域へのMRI の歪みは必須である.また,金属発熱の問題であるが,我々の実験や文献上から,歯科用磁性体金属で口腔粘膜に火傷を生じる可能性はまずない.その他,キーパーなどの磁性体を支台歯に固定するレジンセメントの劣化による支台歯からのキーパーの偏位・脱落が長期使用では問題になる.磁性体を支台歯に接着する場合は経年劣化を考慮し,文献を勘案すると3~4 年程度で再接着するのが望ましいことがわかる.

    臨床MR 装置の静磁場強度が1.5 T(テスラ)から3.0 T に向上しても上記の見識には変化はない.

原著(基礎研究)
  • 輿 圭一郎, 関矢 泰樹, 臼井 龍一, 河野 恭範, 村上 智, 寺山 雄三, 武市 完平, 伊藤 充雄
    原稿種別: 原著(基礎研究)
    2023 年 36 巻 3 号 p. 190-197
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    目的:本研究はJIS 4種チタンを強ひずみ加工した材料を用い,実験用インプラントの製作を行い,両者の機械的性質およびカラー部のひずみ量について比較を行うことを目的とした.

    材料および方法:強ひずみ加工したチタン材を用い,カラー部の厚み0.7 mm(CFT)に加工を行った.一方,JIS 4種チタン材を用い,カラー部の厚み0.7 mm(T7S)と0.9 mm(T9S)に加工を行い実験に供した.各インプラントを傾斜角度30°の治具に固定し,曲げ荷重,たわみ量およびカラー部のひずみ量の測定を行い,その後,エックス線CTによる観察を行った.結果:曲げ荷重はCFTの1,124.6±6.3 Nで最も大きく,次いでT9Sが957.8±24.4 N,そしてT7Sの878.9±17.1 Nの順であり,有意差(p<0.001)が認められた.たわみ量はCFTが最も大きく,T7S-CFTおよびT9S-CFTの間に有意差(T7S-CFT:p=0.0141,T9S-CFT:p<0.001)が認められたが,T7SとT9Sの間には有意差が認められなかった.

    結果:曲げ荷重はCFTの1,124.6±6.3 Nで最も大きく,次いでT9Sが957.8±24.4 N,そしてT7Sの878.9±17.1 Nの順であり,有意差(p<0.001)が認められた.たわみ量はCFTが最も大きく,T7S-CFTおよびT9S-CFTの間に有意差(T7SCFT:p=0.0141,T9S-CFT:p<0.001)が認められたが,T7SとT9Sの間には有意差が認められなかった.

    カラー部のひずみ量は荷重550 NまでT7S,T9SとCFTの有意差が認められなかった.しかしながら,荷重600 NにおけるT7S-T9S間(p=0.0351),荷重650 NにおけるT7S-T9S間(p=0.0227)およびT7S-CFT間(p=0.0430),荷重700 NにおけるT7S-T9S間およびT7S-CFT間(それぞれp<0.001)で有意差が認められ,T7SがT9SおよびCFTより大きい値を示した.一方,T9SおよびCFTとの間には有意差が認められなかった.600 N負荷後のCT観察において,T7Sは嵌合部に隙間が認められた.700 N負荷後においてはすべての試験片の嵌合部に隙間が観察された.

    結論:強ひずみ加工したチタン材を用い製作したインプラントはJIS 4種チタン製より機械的性質に優れ,カラー部のひずみ量が小さいことから,偶発症の防止に有効であることが示唆された.

症例報告
  • 五味 佳蓮, 諸井 明徳, 小野 すみれ, 高山 明裕, 井口 蘭, 上木耕一郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 36 巻 3 号 p. 198-204
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    唇顎口蓋裂患者は先天欠如歯を認めることが多く,顎裂部骨移植後に歯科インプラント治療が行われている.今回我々は,顎裂患者に対し歯科矯正治療と仮骨延長術を併用し,顎裂架橋と歯科インプラント治療(以下,インプラント治療)を行った1例を報告する.

    患者は38歳女性.唇顎口蓋裂に対し口唇・口蓋形成術,下顎枝矢状分割術を受けるも,顎裂部は加療を受けなかった.顎裂部へのインプラント治療目的に2016年9月に当科紹介受診となった.上顎左側側切歯の先天欠損,左側顎裂の残存,上顎後退症を認めた.そのため,術前矯正治療を開始し,上顎左側第一小臼歯部の歯槽骨切り術を施行し,側切歯相当部へ歯列矯正装置を利用し仮骨延長術を行った.歯-歯槽骨移動により新生した骨に歯科インプラントを埋入した.術前矯正終了後に上顎Le FortⅠ型骨切り術を施行し,術後矯正後の2019年4月に上部構造を装着した.2022年4月の時点で顎位は安定し,側貌の改善を認め,歯科インプラントの経過も良好である.

    顎裂部閉鎖と歯列矯正のために歯槽骨切りを用いた仮骨延長術を併用することで,顎裂閉鎖の手術侵襲が軽度となった.また,仮骨延長部の周囲軟組織が再生し,歯科インプラントの良好な清掃性を確立できた.

  • 吉村 麻里奈, 長 太一, 森下 長, 野々宮 貴代, 鈴木 知佳, 中根 くに子, 吉谷 夏純, 齋藤 紘子, 長 清美, 板橋 基雅, ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 36 巻 3 号 p. 205-210
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    現在,インプラント治療は予知性,安定性の高い欠損補綴の一つとされているが,一方で,インプラント埋入後の合併症としてインプラント周囲炎が問題となっている.また,インプラント周囲炎に罹患して汚染したインプラント体表面の除染方法はさまざまなものが報告されているが,いまだにその術式は確立されていない.今回,インプラント治療後にメインテナンスが中断されインプラント周囲炎が発症した2例に対して,エリスリトールパウダーを用いたエアアブレージョン(Air Powder Abrasion,APA)による非外科的デブライドメントを施行し,インプラント専門歯科衛生士による適切なメインテナンスを再開したことにより,良好な経過を得られたので報告する.

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