2023 年 36 巻 3 号 p. 177-184
核磁気共鳴撮像法(MRI)は,磁場を用いて生体の断面像を取得する非侵襲的な診断技術である.しかし,アーチファクトという現象があり,誤った信号が検出されることがある.主要なアーチファクトは,モーションアーチファクト,パーシャルボリューム効果および磁化率アーチファクトの3つである.
モーションアーチファクトは,患者の動きにより画像がぼやける現象であり,検査時の頭部固定が重要である.
パーシャルボリューム効果は,MRIデータの平均化により信号が異なる状態で画像化される現象である.スライス厚を薄くすることで抑制することができるが,信号対雑音比(S/N比)の低下が問題となる.
磁化率アーチファクトは,生体内の磁化率の差が大きい部位で発生し,磁化率が高い物質が原因となる.歯科領域では,口腔内の人工物が発生源となることが多い.特に,矯正用ワイヤーや磁性アタッチメントには注意が必要である.
これらのアーチファクトを理解し,適切に対処することで,MRIを効果的に活用し,正確な診断につなげることが可能となる.