日本口腔インプラント学会誌
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特集 いま問われるMRI 検査への対応
修復補綴装置装着患者のMRI検査時の危険とMR画像への影響
箕輪 和行
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2023 年 36 巻 3 号 p. 185-189

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抄録

磁気共鳴画像撮像法(Magnetic resonance imaging:MRI)において歯科口腔領域は修復補綴装置に伴う金属アーチファクトで,画像劣化が見られる領域である.

金属アーチファクトはMRI における磁化率アーチファクトの一つである.金属,特に鉄やコバルト,ニッケルなどの強磁性体を装着している患者のMRI は歪みが顕著である.磁性体金属の影響は画像の歪みだけではなく,金属自体の発熱,磁力に伴う磁性体の位置変化などが人体に対する問題となる.

一方,金属のうち磁場にさらしても磁化しない非磁性体金属(チタン,金,銀,パラジウムなど)は,MRI 検査に対して安全な金属とされている.

保険導入された磁性アタッチメントを含め,すべての歯科用磁性体金属は,磁性体の含有量と性質によって異なるが,頭蓋底から咽頭部領域へのMRI の歪みは必須である.また,金属発熱の問題であるが,我々の実験や文献上から,歯科用磁性体金属で口腔粘膜に火傷を生じる可能性はまずない.その他,キーパーなどの磁性体を支台歯に固定するレジンセメントの劣化による支台歯からのキーパーの偏位・脱落が長期使用では問題になる.磁性体を支台歯に接着する場合は経年劣化を考慮し,文献を勘案すると3~4 年程度で再接着するのが望ましいことがわかる.

臨床MR 装置の静磁場強度が1.5 T(テスラ)から3.0 T に向上しても上記の見識には変化はない.

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© 2023 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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