日本口腔インプラント学会誌
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特集 インプラント治療を目的として開発された骨補填材を考える
骨組成(炭酸アパタイト)骨補塡材の機能と展開
石川 邦夫
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2024 年 37 巻 2 号 p. 86-92

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抄録

骨の無機組成はハイドロキシ(水酸)アパタイトではなく,炭酸アパタイトである.海で生まれた生体は,捕食者からの防御のために海水成分を用いて炭酸カルシウムを組成とする外骨格を形成した.一方,生命体のエネルギー源はリン酸(アデノシン三リン酸など)である.生命体の運動性の向上や,微量のリン酸を含む海中から陸上(空中にはリン酸が存在しない)への移動に伴い,脊椎動物は骨にリン酸を貯蔵した.その結果,脊椎動物の骨格組成は炭酸カルシウムにリン酸を付与した炭酸アパタイトとなった.

炭酸アパタイト骨補塡材は,上述した生命体の進化に学び炭酸カルシウムにリン酸塩を付与すると調製できる.100%化学合成された炭酸アパタイトは,骨と同じく破骨細胞によって吸収される.細胞間情報伝達によって骨芽細胞が活性化されるため,炭酸アパタイトは圧倒的な骨伝導性を示す.

多施設治験で有効性が100%であることが証明された.その結果,炭酸アパタイト骨補塡材は日本で初めて適用制限がない骨補塡材として薬事承認され,日米で臨床応用されている.日本ではトップシェアを誇る.

アパタイトは医用材料として必須である.しかしながらハイドロキシアパタイトは骨の無機組成ではない.治療効果の観点から,ハイドロキシアパタイト関連医用材料を炭酸アパタイトで再構築することが喫緊の課題である.

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© 2024 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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