日本口腔インプラント学会誌
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原著(基礎研究)
咬頭傾斜角がインプラントカラー部のひずみとたわみに及ぼす影響
片岡 志基輿 佑史郎布田 颯米田 隆紀山倉 和典尾関 順子橋本 和佳伊藤 充雄
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2025 年 38 巻 1 号 p. 43-51

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抄録

目的:本研究の目的は,インプラント上部構造に付与する咬頭傾斜角がインプラントカラー部のひずみに及ぼす影響について検討することである.

材料および方法:実験用インプラントは,強ひずみ加工したチタン材を用いて製作した.実験用インプラントは万能試験機の治具に垂直に固定し,咬頭傾斜角15°(C15と表示)および30°(C30と表示)に加工した上部構造をそれぞれに装着した.ひずみの測定は,ひずみゲージを実験用インプラントの最頂部位側のカラー部先端に貼り付け,荷重50Nから800Nまで行った.また,ひずみ測定後,無負荷時の残留ひずみと記録紙からたわみの読み取りを行った.接合部の間隙の幅はCTを用いて測定した.測定は各条件5個の試験片を用い,測定値は分散分析(危険率:5%)で有意差検定を行った.

結果:0.1%のひずみはC15の250N,C30は150Nであった.荷重750Nおよび800NにおいてC30のひずみはC15の約2倍であり,有意差(p<0.001)が認められた.800NまでのたわみはC15が0.76±0.05mm,C30は1.43±0.10mmであり,有意差(p<0.001)が認められた.測定後,無負荷状態にしたカラー部の残留ひずみはC15が0.03±0.01%,C30は0.21±0.02%であり,C30はC15より永久変形が大きかった.ひずみ測定後のC15の連結部の間隙の幅は16.4±4.7µm,C30は38.2±3.8µmであり,有意差(p<0.001)が認められた.

結論:咬頭傾斜角が大きいC30はC15よりもひずみ量,間隙が大きいことから,生物学的および機械的偶発症を生じる危険性が示唆された.

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