2026 年 39 巻 1 号 p. 27-31
超高齢社会において,高血圧症などの循環器疾患を基礎疾患に有する高齢患者が,歯科インプラント治療など比較的侵襲性の高い歯科診療を受ける機会が増加している.高血圧症は歯科治療時に生じる全身的併発症の主要なリスク因子であり,特に局所麻酔剤に含まれるアドレナリンや手術に伴う精神的・身体的ストレスによって急激な血圧上昇が惹起され,高血圧性脳症や脳出血などの重大な急性併発症を発症するリスクが高まる.そのため,インプラント治療時の高血圧症患者に対する周術期管理体制の整備は,歯科医療の質を確保するうえで喫緊の課題である.
インプラント治療前は,医療面接による既往歴,内服薬の確認,家庭血圧の把握,現在の血圧コントロール状況,合併症の有無などを評価するとともに,必要時は内科主治医に情報提供を求め,患者の全身状態を正確に把握することが肝要である.治療中は,定期的に血圧や心拍数の測定を行い,経皮的動脈血酸素飽和度や心電図モニターも併用して,患者の全身状態を経時的に把握することが重要である.また,不安や緊張が強い患者には,笑気吸入鎮静法や静脈内鎮静法の併用も有効であるが,適応症例を見極める必要がある.患者の特性を考慮して全身管理を行えば,安全かつ質の高い歯科インプラント治療につながる.