日本口腔インプラント学会誌
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特集 AIとロボティクスが切り拓く歯科医療の未来
はじめに
細川 隆司鮎川 保則
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2026 年 39 巻 2 号 p. 82

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抄録

近年,計算機性能の向上と深層学習技術の進展に伴い,人工知能(AI)はあらゆる産業にパラダイムシフトをもたらしている.この潮流は歯科医療領域においても例外ではなく,パノラマエックス線画像,CBCT 画像,口腔内スキャナによる三次元データ(STL データ)など,日常診療で得られるデジタルデータを対象とした研究が急速に拡大している.従来の画像診断支援における齲蝕や歯周病の検出から始まった歯科AI は,現在,補綴治療やインプラント治療におけるリスク予測,術式選択,さらにはロボティクスと融合した術中支援システムへと,その応用範囲を質的に変化させつつある.

しかし,医療AI の社会実装を加速させるためには,技術的な予測精度の向上と同時に,医療倫理や安全性を担保するための厳格なガバナンスが不可欠である.特に,AIの判断過程がブラックボックス化する課題に対しては,ヒートマップなどで判断根拠を可視化する「Explainable AI」の導入が必須となる.また,生成AIや大規模言語モデルをインフォームドコンセントなどの対話支援に用いる際には,ハルシネーション(根拠なき出力)による誤情報の伝達や,要配慮個人情報の流出を徹底的に防がねばならない. これらの課題に対するきわめて現実的な解法として,最新のアーキテクチャ設計では,外部知識基盤を多層構造化し,AI エージェントの制御によって「断定的結論の回避」や「専門的判断が必要な場面での応答抑制」を自律的に行う安全性重視の設計が提唱されている.すなわち,AIの役割は個別症例に対する医学的判断の主体となることではなく,治療選択肢の構造化や患者の理解度に応じた情報整理といった「歯科医師と患者の対話の補助・支援」に限定されるべきであるという考え方である.

本特集では,第55回日本口腔インプラント学会学術大会の特別シンポジウム「AIとロボティクスが切り拓く歯科医療の未来」での議論を礎とし,歯科AIの基礎概念から臨床応用,そして安全性や個人情報保護に配慮したシステム設計論まで,最前線の知見を包括的に提示していただいた.AI技術がもつ臨床的な有用性と限界を正しく見極め,術者との協調および説明責任の所在を明確にするガバナンス体制を構築することこそが,次世代の歯科医療に真に資する社会実装への道標となる.本稿が,会員各位の臨床と研究における新たな一歩を照らす契機となれば幸いである.

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