抄録
前腕皮弁は薄くしなやかな皮弁であり,長い血管柄を有するため口腔癌切除後の軟組織の再建に多用されている。前腕皮弁採取後の皮膚欠損部には,通常大腿部や腹部からの全層あるいは分層植皮が行われているが,植皮後の瘢痕や前腕部皮膚との色調の相違で整容性に問題が生じる。また,採皮のために新たな術創を求めることや,採皮部の治癒経過が長引いたり,処置に煩わしさがある。当科では2001年から前腕皮弁を挙上する際に切開剥離する前腕上部の皮膚を用いて皮弁採取部の植皮を行っている。植皮片の採取方法は,皮弁採取部より中枢側の前腕部皮膚を,三角形に全層で切離し,皮弁採取後の欠損部に植皮する。今回,この植皮法を行った症例と腹部からの植皮症例とを臨床的に比較・検討した。腹部から植皮を行った症例と比較して,カラーマッチがよく,整容性に優れていた。また,前腕皮弁の大きさに応じて,植皮片の三角形の形態を調整すれば,全ての症例に適応が可能であった。前腕部採皮法は,前腕皮弁採取部への植皮に有用な方法であると考えられた。