日本口腔腫瘍学会誌
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23 巻, 1 号
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原著
  • 橋本 憲一郎, 福沢 秀昭, 利谷 幸治, 池邉 哲郎, 大関 悟
    2011 年 23 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    前腕皮弁は薄くしなやかな皮弁であり,長い血管柄を有するため口腔癌切除後の軟組織の再建に多用されている。前腕皮弁採取後の皮膚欠損部には,通常大腿部や腹部からの全層あるいは分層植皮が行われているが,植皮後の瘢痕や前腕部皮膚との色調の相違で整容性に問題が生じる。また,採皮のために新たな術創を求めることや,採皮部の治癒経過が長引いたり,処置に煩わしさがある。当科では2001年から前腕皮弁を挙上する際に切開剥離する前腕上部の皮膚を用いて皮弁採取部の植皮を行っている。植皮片の採取方法は,皮弁採取部より中枢側の前腕部皮膚を,三角形に全層で切離し,皮弁採取後の欠損部に植皮する。今回,この植皮法を行った症例と腹部からの植皮症例とを臨床的に比較・検討した。腹部から植皮を行った症例と比較して,カラーマッチがよく,整容性に優れていた。また,前腕皮弁の大きさに応じて,植皮片の三角形の形態を調整すれば,全ての症例に適応が可能であった。前腕部採皮法は,前腕皮弁採取部への植皮に有用な方法であると考えられた。
症例
  • 柴崎 麻衣子, 光藤 健司, 岩井 俊憲, 矢島 康治, 大屋 貴志, 大原 良仁, 光永 幸代, 廣田 誠, 藤内 祝
    2011 年 23 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    われわれは口底癌(T4aN3M0)に対し,温熱化学放射線療法が著効した1例を経験したので報告する。
    口底部の腫瘤を主訴に60歳代男性が当科を紹介受診した。口底には40×35mmの腫瘍を認め,左側頸部の腫脹も認めた。CTでは腫瘍は外舌筋へ浸潤し,大きさは42×35×30mmであった。また,レベルIIからIVには6cmを超える大きな転移リンパ節を認めた。生検および画像検査の結果,口底扁平上皮癌(T4aN3M0)と診断した。患者は原発部位の温存を希望し,頸部郭清術以外の手術については同意しなかったため,原発巣へは両側浅側頭動脈よりの逆行性超選択的動注法を用いた連日同時放射線化学療法(シスプラチン:計264mg,ドセタキセル:計144mg,外照射:1.8Gy/回,計59.4Gy)を施行し,頸部に対しては温熱放射線療法を行った(RF誘電加温,計2回)。治療後,原発巣および頸部リンパ節転移はともに著明に縮小した。治療終了6週後に原発および頸部の治療効果はCRと判定した。しかし,CTで肺転移を認めたため化学療法を施行したが,治療終了20か月後に死亡した。経過観察中には,原発および頸部の再発を認めなかった。
  • 後藤 雄一, 川野 真太郎, 大部 一成, 鈴木 華子, 松原 良太, 清末 崇裕, 小林 家吉, 白土 雄司, 中村 誠司
    2011 年 23 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    多形腺腫は唾液腺腫瘍の中で最も発生頻度の高い良性腫瘍であり,一般的に無痛性で充実性の腫瘤を呈する。今回われわれは著明な嚢胞形成を伴う極めてまれな顎下腺多形腺腫の1例を経験したので報告する。患者は50歳代の女性で,約20年前から左顎下部の無痛性腫瘤を自覚していた。CTおよびMRI検査より左顎下腺に大きな嚢胞性の腫瘤を認めた。針生検にて病理組織学的に多形腺腫と診断されたため,全身麻酔下に左顎下腺摘出術を施行した。摘出物の病理組織像では,導管様の二層構造からなる腫瘍実質の中に著明な嚢胞形成を認めた。免疫組織化学染色ではcytokeratin (AE1/AE3),α-SMAは腫瘍細胞に発現し,S-100タンパクは主に間質の細胞に陽性であった。また,Ki-67陽性率は1%以下であった。嚢胞壁は導管様の二層構造を呈しており,基底側の腫瘍細胞のみがα-SMAに陽性であった。これらの所見より,本症例における嚢胞様構造は腺管構造の拡張により生じたものと示唆された。この症例の最終的な病理組織学的診断は多形腺腫であった。現在,術後約1年9か月であるが再発の所見は認められない。
関連国際学会参加記録
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