日本口腔腫瘍学会誌
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症例
著明な嚢胞形成を伴った顎下腺多形腺腫の1例
後藤 雄一川野 真太郎大部 一成鈴木 華子松原 良太清末 崇裕小林 家吉白土 雄司中村 誠司
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2011 年 23 巻 1 号 p. 17-23

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抄録

多形腺腫は唾液腺腫瘍の中で最も発生頻度の高い良性腫瘍であり,一般的に無痛性で充実性の腫瘤を呈する。今回われわれは著明な嚢胞形成を伴う極めてまれな顎下腺多形腺腫の1例を経験したので報告する。患者は50歳代の女性で,約20年前から左顎下部の無痛性腫瘤を自覚していた。CTおよびMRI検査より左顎下腺に大きな嚢胞性の腫瘤を認めた。針生検にて病理組織学的に多形腺腫と診断されたため,全身麻酔下に左顎下腺摘出術を施行した。摘出物の病理組織像では,導管様の二層構造からなる腫瘍実質の中に著明な嚢胞形成を認めた。免疫組織化学染色ではcytokeratin (AE1/AE3),α-SMAは腫瘍細胞に発現し,S-100タンパクは主に間質の細胞に陽性であった。また,Ki-67陽性率は1%以下であった。嚢胞壁は導管様の二層構造を呈しており,基底側の腫瘍細胞のみがα-SMAに陽性であった。これらの所見より,本症例における嚢胞様構造は腺管構造の拡張により生じたものと示唆された。この症例の最終的な病理組織学的診断は多形腺腫であった。現在,術後約1年9か月であるが再発の所見は認められない。

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© 2011 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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