抄録
標準治療に抵抗性を示す難治性の悪性腫瘍に対し,専門的抗原提示細胞である樹状細胞(DC)を用いた癌ワクチン(DCワクチン)が注目されている。
DCワクチンでは,第1に,品質の良いDCを大量に,安定的に作製するシステムが必要である。特に,適切な成熟DCの誘導法の確立は重要である。われわれは,レンサ球菌由来免疫賦活剤OK-432の活性成分が,Toll-like receptorsを介してDCを成熟させ,抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導し,担癌マウスにおいて抗腫瘍効果を発現することを明らかにした。第2に,CTL誘導能が強く,免疫学的エスケープされ難い抗原を使用することが重要であり,このような癌抗原の探索が進んでいる。
われわれは,口腔癌に対するDCワクチンの治療効果を,前向きならびに後向きの臨床研究にて検討し,DCワクチンが標準治療無効の難治性口腔癌に対して,安全かつ有効な治療法と成ることを強く示唆する結果を得ている。今後,さらにエビデンスレベルの高い臨床試験の結果を報告していくことが必要であると考えられる。