抄録
放線菌症は口腔内の常在菌である放線菌により発症する炎症性疾患で頭頸部領域に好発する。今回,舌癌術後患者においてFDG-PETで顎下部にSUV値9.9の集積を認め,MRI,CT検査で舌癌の頸部再発を強く疑う所見を認めたため,全身麻酔下に腫瘤の切除術を行ったところ,病理組織学的に放線菌感染を伴う類表皮嚢胞であった症例を経験した。文献的には慢性型放線菌症は炎症所見が低く,造影CTやPETにおいても悪性腫瘍に類似する所見を示す場合があるとされる。造影CT,PETなどにて悪性腫瘍が疑われる場合でも鑑別診断として放線菌症などの炎症性疾患も考慮する必要があると考える。