日本口腔腫瘍学会誌
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症例
HIV陽性患者に発生した舌癌に対し根治切除および術後放射線療法を行った1例
小池 剛史鎌田 孝広鈴木 滋嶋根 哲小林 啓一栗田 浩
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2011 年 23 巻 4 号 p. 161-166

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抄録
HIV陽性患者では,頭頸部悪性腫瘍の発症率増加が指摘されている。HIV感染症を合併した患者では,積極的ながん治療の介入に伴い死亡率が有意に増加してしまうため厳格な管理が必要となる。しかしながら,HIV陽性頭頸部悪性腫瘍患者に対する治療法の選択に関する報告は少ない。今回われわれは,HIV感染を有する舌癌の1例を経験したので報告する。
患者は40歳代男性,右舌癌(扁平上皮癌,T2N0M0)の加療依頼にて当院紹介となった。患者は術前の血液検査にてHIV抗体が陽性であることが判明した。患者のウイルス量は低く(3400copies/ml),CD4陽性Tリンパ球数は高く(527/μl)保たれていた。舌部分切除術および遊離皮膚移植術を施行した。初回手術から約6か月後,後発頸部リンパ節転移が認められた。追加の根治的頸部郭清術および術後放射線治療(1.8Gy/日,計63Gy,10週間)を施行した。これらの治療期間中,明らかな副作用の発現はなく,さらにHIV感染症の増悪もみられなかった。初回手術から7年以上が経過したが,再発や転移を認めず経過良好である。
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© 2011 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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